翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム再録「原田勝の部屋」

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第27回 かな漢字のこと

★表記にこだわるわけは、最初に編集者さんに訳稿を出す時に、できればそのまま本にしてもいい形にしておきたいからです。もちろん、そんなことはできるわけはないのですが、それでも、そういうつもりで原稿を整えたい。そうすると、かな漢字の表記だけでなく…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第28回 "healing" は「癒やし」か?

★原書に何度も出てくるある単語を、日本語でも一つの訳語に統一して訳すのがむずかしいことは、第23回「"very"はとてもか?」の回でも触れました。この回では、さらにそれがキーワードに近い言葉なのに、訳語を統一できなかったケースを扱っています。簡単に…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第25回 サッカーを訳す

★昨日は土砂降りの雨の中、埼玉スタジアムに行ってました。最後、危なかったですが、レッズはFC東京に勝ち、とりあえずひとつ順位を上げました。堀体制になって、気のせいか、選手がのびのびやっているように見えます。ダービーには勝てなかったものの、シャ…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第24回 インチとセンチ

★結局、日本の作家が書くとしたらどう書くか、その状態にできるだけ近づけよう、ということなのだと思います。(2017年08月19日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この回で例としてとりあげたのは、『王国の鍵4 戦…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第23回 very は「とても」か?

★もちろん、very は必ず「とても」と訳すわけではないのですが、自分の訳本を調べたら、それが如実にわかったので、ちょっとびっくりしました。そう、機械的に訳語を決めてはいけません。と、自分で言いながら、つい……。(2017年08月18日「再」再録)★ ーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第22回 出だしは力が入るもの

★出だしが読みにくいと、読んでもらえない(買ってもらえない)んじゃないかと心配になります。原作者も、きっとかなり力を入れて書くんじゃないでしょうか。まずは1ページ読ませないと、そして、そのページをめくってもらわないと。(2017年08月17日「再」…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第21回 タイトルはだれが決める

★九月刊行の『オオカミを森へ』は、原題が "Wolf Wilder" なので、パターン②の「原題直訳」と、パターン③の「新しいタイトル」の折衷ですね。体言止めではないので、『明日に向かって撃て』型、いや、助詞で終わっているので、『去年マリエンバートで』型か…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第19回 第二外国語

★九月に出る新刊、『オオカミを森へ』(キャサリン・ランデル作、小峰書店)では、ほんの少しロシヤ語が出てきます。ほんの少しね。あれくらいなら大丈夫。(2017年08月15日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二外国語、に遭遇したのは、大…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第18回 リーディングのディテール(その3)

★リーディングは、翻訳書という形ではあれ、本を世に出すための第一歩と言ってもよく、もっと大切にすべき仕事ではないかと、この頃強く思うのですが、どうでしょう? 出版社も、そこのところをもっと真剣に考えてほしい。(2017年08月14日「再」再録)★ ー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第17回 リーディングのディテール(その2)

★この回で「すべてのレジュメは主観的」と書いていますが、ほんとうにそうだと思います。その「主観」が、世間とズレているかどうかは、また別問題ですが、ズレていてもいいんじゃないでしょうか。(2017年08月13日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第16回 リーディングのディテール(その1)

★リーディングとは、結局、原書を読むこと。そして、どこがどうおもしろいと思うか、思わないか、を文章にすること。(2017年08月12日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー リーディングとは、原書を読んで作品を評価し…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第15回 ペーパーバック百冊

★この記事を書いたあとも、少しずつ本は増え、しかも、そのうちに、「あっ、翻訳されちゃった。やっぱり面白かったんだ、すぐに読んでおけばよかった……」という原書がたまっていきます。でも、たぶん、これは必要な投資なんだと思います。ピンポイントでとり…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第14回 「です・ます」調のこと

★この作品は、章が変わるごとに、老いた女性の語り手の文を「です・ます」調で、十代の男の子が語り手の文を「だ・である」調で処理するという、とてもやりがいのある翻訳作業でした。こういうの、じつは、けっこう好きです。うまく行くと、文章に味わいが加…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第13回 キャラクターの訳し分け

★セリフによるキャラクターの際立たせ方はとても面白い翻訳作業です。自分は、どこでこういう技(?)を身につけたのかと考えてみると、読書体験はもちろん大きいのですが、中高生のころ、毎日のようにテレビで見ていた洋画劇場の字幕や吹き替えのせりふに基…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第12回 戦争を知らない子どもたち

★8月になると、この記事を自分でも読み返したくなります。イラクもISからの解放が見えてきましたが、今度は、その後が、また大変でしょう。記事の中で、わたしが訳した戦争をあつかった児童文学を挙げていますが、このあとも、『フェリックスとゼルダ』、『…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第9回 翻訳の際の心がけ ── その4

★「自分の日本語」という表現は、傲慢な気もしますが、でも、自分の翻訳した本はすべて自分の言葉で成り立っているのだと思うことは、とても大切だと思うのです。(2017年08月02日「再」再録)★ 『レトリック感覚 (講談社学術文庫)』と『レトリック認識 (講…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第8回 翻訳の際の心がけ ── その3

★この回に挙げた、「声に出して読め」と「見直すほど良くなる」という心がけ二つは、やる気さえあればだれでにもできる訳文向上術だと思います。あとは、どれだけしつこくやるか。天才でない翻訳者は、しつこくやるしかないのです。(2017年08月01日「再」再…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第7回 翻訳の際の心がけ ── その2

★日本人は生真面目なので、翻訳においても、原書の構造や語彙をできるだけ生かそうとするのだと思いますが、できた日本語の文章が意味不明では困るわけで……。おそらく、この「(3)訳者は日本語に寄り添え」というのが、一番できそうでできないことのような…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第6回 翻訳の際の心がけ ── その1

★さて、今日は第6回を再アップします。こういう面倒くさいことを常時考えているわけではありませんが、一度考えておくと、迷った時、決めておいた方針が無意識のうちに助けてくれるような気がしています。(2017年7月30日、「再」再録)★ ーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第3回 「見取り図」が描けるか?

★見取り図は今もできるだけ書くようにしていますが、原文ではつじつまが合わないことはやはりちょくちょくあって困ります。この回では偉そうに色々書いていますが、編集者さんや校正者さんに指摘されて初めて気づくことが多いのは今も変わりません。読者によ…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第2回 「もちこみ」のこと

★最近のもちこみ成功例は、『ペーパーボーイ』(ヴィンス・ヴォーター作、岩波書店、2016年)、『ハーレムの闘う本屋』(ヴォーンダ・ミショー・ネルソン作、あすなろ書房、2015年)、『フランケンシュタイン家の双子』(ケネス・オッペル作、東京創元社2013…

コラム「再」再録 「原田勝の部屋」 第1回 翻訳のジャンル

★なかなかブログが更新できず、ついに禁断のコラム「再」再録をしようと思います。まあ、自分で読み返す意味もありますし、Facebook開始以降の読者の皆さんの中には、お読みいただいていない方もいらっしゃるはず。というわけで、以下、翻訳について書いた昔…

《寄稿》伊達淳さん(後半)

昨日の続き。 伊達さんの話を聞いていると、とても翻訳に対して謙虚で、調べ物やレジュメの書き方など、すごく丁寧なお仕事をされていることを感じました。ああ、もう少し自分も手をかけてやらないといけない、と反省しました。 奥様の故郷で、今、お住まい…

翻訳家、伊達淳さんと。

伊達さんとは昨日が初対面でした。お住いのある松江から、東京の出版社回りをするために上京されるというので、お会いしたのですが、とても初対面とは思えず、二時間半もの間、二人で翻訳にまつわる話をノンストップでしゃべりまくりました。楽しい時間でし…

コラム再録「原田勝の部屋」 第61回 翻訳は楽しい ── 最終回に寄せて

コラム「原田勝の部屋」の再録はこれでおしまいです。ただ、コラムそのものは、回によっては二度、三度と読んでいただいて役に立つものもあると思いますので、カテゴリーから遡って再読していただければ幸いです。 そもそもこのブログは、この再録のために始…

コラム再録「原田勝の部屋」 第60回 早いがえらい、か?

この回は、翻訳においては、仕事が早いのが必ずしもいいことではないのではないか、という、言い訳じみた論を展開しています。いや、早くてうまければ、それでいいんですが、早いとまずくなるので、仕方なく、遅くてもそこそこうまい、を目指さざるを得ない…

コラム再録「原田勝の部屋」 第59回 文体研究(5) ── 『ウェストール短編集』

この回でとりあげたロバート・ウェストールの短編集です。表紙は宮崎駿さん。いいですねえ。イングランドって感じです。 真夜中の電話 (児童書) 作者: ロバート・ウェストール,原田勝 出版社/メーカー: 徳間書店 発売日: 2014/08/08 メディア: 単行本 この商…

コラム再録「原田勝の部屋」 第58回 文体研究(4) ── ピエロを探せ

この回でとりあげた『王国の鍵2 地の底の火曜日』の表紙。革装風のカバーをはずすと、表紙は黄色です。デザインは永松大剛さん(BUFFALO.GYM)。このシリーズは、カバーをはずすと明るい色が出てきます。大好きなデザインです。 こちらは原書。二種類ありま…

コラム再録「原田勝の部屋」 第57回 文体研究(3) ── 『ザ・ブック・オブ・ザ・ダンカウ』

原書と訳書の表紙。原書はいかにも寓話的ですが、訳書はファンタジー的と言えるかもしれません。

コラム再録「原田勝の部屋」 第56回 襟を正す

『S先生のこと』(尾崎俊介著、新宿書房、2013) この回は、上のエッセイ『S先生のこと』と、映画『ドストエフスキーと愛に生きる』のことを書きました。どちらも翻訳に深く関わった作品です。では、どうぞ。

コラム再録「原田勝の部屋」 第55回 文体研究(2) ── 『雲母の光る道』

この回にとりあげた『雲母の光る道』の原作、"Mica Highway" の書影です。メンディングテープで補修してあるように見えますが、こういうデザインなんです。最初に見た時は、仮の表紙なのかと思いました。 翻訳版はこちら。 雲母の光る道 (創元推理文庫) 作者…

コラム再録「原田勝の部屋」 第54回 文体研究(1) ── 『フェリックスとゼルダ』

この回でとりあげた『フェリックスとゼルダ』の帯。 「史上最強の楽天家」というコピーは、使えそうで、なかなか使うのがむずかしい表現だと思います。これは版元のあすなろ書房さんが考えたものです。表紙のパステルグリーンの色使いもそうですが、ホロコー…

コラム再録「原田勝の部屋」 第53回 文体を考える

文体論はむずかしい。 訳文の文体は、日本語なのですから、そういう意味では翻訳者の文体なのですが、でも、原作者の文体の一部は日本語に移るところが面白い。 お断わりしておきますが、文体論なんて何ひとつ学んだことがないので、全部自己流による分析で…

コラム再録「原田勝の部屋」 第52回 至福の時

この回で触れたのは、『王国の鍵3、海に沈んだ水曜日』(ガース・ニクス作、主婦の友社)です。これ、カバーをはずすと、きれいな水色の表紙をしています。この水色のおかげで、電車の中で男の子が読んでいるのがこの本だと気づきました。

コラム再録「原田勝の部屋」 第51回 原音主義

固有名詞の表記はほんとうに悩ましい問題です。 今、翻訳中の小説は、山の話だということは、以前も触れましたが、まずは「エヴェレスト」か「エベレスト」か、で悩みます。「エベレスト」のほうが日本人にはなじみがありますよね。さて、どうしたものか。い…

コラム再録「原田勝の部屋」 第50回 読書会

この回でとりあげた『クラバート』。一度見たら忘れられない表紙ですね。 クラバート 作者: オトフリート=プロイスラー,ヘルベルト=ホルツィング,中村浩三 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 1980/05 メディア: 単行本 購入: 18人 クリック: 353回 この商品…

コラム再録「原田勝の部屋」 第49回 フランケンシュタインは怪物か?

素敵な表紙絵を描いてくださったのは浅野隆広さん、デザインは藤田知子さん。大好きな表紙です。 浅野さんは、時代小説の表紙をたくさん描いています。『獣の奏者』の表紙も浅野さんです。

コラム再録「原田勝の部屋」 第48回 翻訳の速度

クルム伊達さん、がんばってますよねえ。中年の星ですよ。公子スマイル健在、というか、若い頃より断然愛想いいし。何より、ほかにあんなテニスする選手いません。錦織くんもそう。ユニークなんですよ、テニスが。え? 翻訳と何の関係があるのかって? いや…

コラム再録「原田勝の部屋」 第47回 「役割語」という考え方

翻訳、とくに物語中のせりふの翻訳に関しては、この「役割語」という考え方は大変有用です。ステレオタイプと思われるかもしれませんが、ある意味、言語というのはステレオタイプであるがゆえに、意志の疎通が図れるのです。 ただ、金水さんのこの著書は、そ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第46回 作家の精神

外国の作家さんの講演会は、そう頻繁にあるわけではありませんが、聴きにいくとなかなかおもしろく、刺激を受けます。今まで行ったのは、ダニエル・キース、ジェフリー・アーチャー、ショーン・タン、そして、この時のデイヴィッド・アーモンド。自分の訳書…

コラム再録「原田勝の部屋」 第45回 訳者の名前

意識して選んでいるわけではないのに、なんだか、ちょっと怖いイメージの本が多くなってしまうのが不思議です。下の4冊は、いずれもわたしの訳書の原書カバー。 一度、出来上がったばかりの訳書を、ある書店の児童書売り場の方に読んでもらおうと思ってもっ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第44回 鉛筆と赤ペン

まとめ買いした「消せる赤ペン」も、だいぶ減ってきました。たくさん仕事をして、どんどん使いたいものですが、赤ペンが使われるということは、ワープロで訳文をこしらえた段階での完成度が低い、ということでもありますから、赤ペンの在庫は減らないほうが…

コラム再録「原田勝の部屋」 第43回 束見本(つかみほん)

物としての本に、大きな魅力を感じます。装幀は気になりますねえ。生まれ変わったら装幀家になりたい。 奇しくも、この回でとりあげた二冊の訳書、『大地のランナー』と『フェリックスとゼルダ』は、それぞれ、読書感想画と読書感想文の課題図書になり、多く…

コラム再録「原田勝の部屋」 第42回 文法の力

文法書では、これをよく参照しています。 ロイヤル英文法―徹底例解 作者: 綿貫陽,須貝猛敏,宮川幸久,高松尚弘 出版社/メーカー: 旺文社 発売日: 2000/11/11 メディア: 単行本 購入: 13人 クリック: 85回 この商品を含むブログ (62件) を見る 今も現役、江川…

コラム再録「原田勝の部屋」 第41回 原作者との交流

1999年に、ロバート・コーミア氏から届いたクリスマスカード。 メールやSNSの発達で、手紙や葉書のやりとりがなくなってしまったのはちょっぴり残念です。

コラム再録「原田勝の部屋」 第40回 翻訳世界旅行

この記事を書いたあとの訳書の舞台をたどっていくと、ジュネーブ(『フランケンシュタイン家の双子』、『フランケンシュタイン家の亡霊』)のあとは、イングランド北部(『ロバート・ウェストール短編集 真夜中の電話』)、公民権運動が盛んだったころのニュ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第39回 "Little Princess"

『小公女』の話です。写真は左から川端康成・野上彰訳、原作、そして、高楼方子訳。 この文で書いたように、訳者が物語を「語る」ように訳すことは、今はなかなかむずかしいのですが、意識だけでも、そういうつもりで翻訳にとりくみたいものです。

コラム再録「原田勝の部屋」 第38回 歴史的現在 (その2) +『古王国記』続編情報

この回に引用した『王国の鍵7 復活の日曜日』は、シリーズ全7巻の最終巻です。左側に見えるのが、原書 "Lord Sunday"。作者ガース・ニクスの丁寧な作り込みが楽しめるファンタジーシリーズです。 ガース・ニクスについては、『古王国記』の続編はどうなっ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第37回 歴史的現在 (その1)

加藤周一著、『日本文化における時間と空間』です。 日本文化における時間と空間 作者: 加藤周一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2007/03/27 メディア: 単行本 購入: 10人 クリック: 109回 この商品を含むブログ (19件) を見る こんなむつかしい本はふだ…

コラム再録「原田勝の部屋」 第36回 翻訳は芸術か? (その4)

大それたお題で、よくもこんなに長々と書いたものだと思いますが、この四回に書いたことは、自分で納得するために書いたようなものです。まあ、そういう言い方をすると、このコラムは、結局、自分のために書いていたようにも思いますが。 梅雨の晴れ間、部屋…