翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム再録「原田勝の部屋」

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第61回 翻訳は楽しい ── 最終回に寄せて

★「再」再録も、これでおしまいです。ありがとうございました。考えながら仕事をするのは楽しいことです。なかなかその通りには行かないのですが……。(2017年09月23日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー コラム「原田勝の部屋」の再録…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第60回 早いがえらい、か?

★最近はとくに、早くてうまい翻訳者になれればいいのに、と思うようになりました。でも、早くならない……。(2017年09月22日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この回は、翻訳においては、仕事が早いのが必ずしもいいことではないのではな…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第59回 文体研究(5) ── 『ウェストール短編集』

★さて、文体をとりあげた最後の回ですが、原作者の文体と翻訳者の文体について少しふれています。翻訳者の場合は文体なのか、テクニックなのか、微妙なところですね。さらに、編集者さんの関与のことも……。(2017年09月19日「再」再録)★ ーーーーーーーーー…

コラム再録「原田勝の部屋」 第58回 文体研究(4) ── ピエロを探せ

★登場人物のバリエーションには、やはり作者の意図がこめられているはずです。中でも、三枚目の脇役は、そうとわかってせりふの処理をしないといけません。浮いちゃいけないけれど、目立たなきゃいけない。(2017年09月18日「再」再録)★ ーーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第57回 文体研究(3) ── 『ザ・ブック・オブ・ザ・ダンカウ』

★英語の narrative は、「物語」でもあり、「語り口」「語りの」といった意味をもちます。narrate、narration と同根ですね。そう「書く、訳す」ではなく、「語る」のです。(2017年09月17日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

コラム再録「原田勝の部屋」 第55回 文体研究(2) ── 『雲母の光る道』

★この作品は、修飾語が多めの、どちらかというと「濃い」文体です。それが、少し昔のアメリカ南部という作品世界をよく表わしています。(2017年09月13日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この回にとりあげた『雲母の光る道』の原…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第54回 文体研究(1) ── 『フェリックスとゼルダ』

★作者(=翻訳者)と物語や登場人物との距離を、原文に沿って、あるいは原文の意図をくんで、近づけたり遠ざけたりすることが、文体を決めるひとつの要素ではないかと思います。(2017年09月11日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第53回 文体を考える

★文章の内容だけでなく、文体という得体のしれないものが、翻訳という行為を通じてなお読者に伝わる不思議。いや、伝わるのか? というお話です。(2017年09月10日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 文体論はむずかしい。 訳文の文体は、日…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第51回 原音主義

★欧米の人は、名前や地名の読み方にさほどこだわりがないようで、作者から「好きに読んでくれ」なんていう返事が帰ってくることもしばしば。日本人がこれほど名前の発音にこだわるのも、日本語のカタカナが表音文字だから。文字にしてしまうと読み方が一通り…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第47回 「役割語」という考え方

★「役割語」、とても大切な考え方です。一方で、あえて役割語を使わないことも、作品の質を高めるのにとても大切だとわかります。いやあ、言葉はおもしろい。(2017年09月05日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 翻…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第46回 作家の精神

★この後、訳書の原作者としては、『エベレスト・ファイル』の原作者、マット・ディキンソンさんにお会いすることができました。こうして作家の話を聞くと、ああ、やっぱり自分は作家にはなれないなあ、と思うのです。(2017年09月04日「再」再録)★ ーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第43回 束見本(つかみほん)

★この回では装幀のことをとりあげています。ブックデザインですね。判型、表紙、カバー、イラスト、紙、フォント、挿絵、レイアウト……。装幀によって、本はたぶんまったくちがった「もの」になります。今、訳している本は、なんと活字が緑色! 日本語版はど…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第42回 文法の力

★文法は、意味を正確に把握するための助け船みたいなもの。大学受験の参考書にはイディオムや構文の説明も載っているし、ホントに為になります。見たくない、という気持ちはわかるけど、ぜひ!(2017年09月01日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第39回 "Little Princess"

★『小公女』大好きでした。この回でふれた古典児童書を読む会は今も続いていて、次回の課題本は『若草物語』です。4人の中では、ジョーが一番好きでした。『若草物語』もいろいろな訳者が訳していて、その違いも楽しむことができます。ただ、今の子どもたち…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第38回 歴史的現在 (その2)

★この回では、日本語の語尾のいわゆる過去形・現在形に、読者や視点人物と、描写対象とのさまざまな距離感を調節する役割があることを説明しています。意識せずにこうした操作をしていることがほとんどですが、言われてみるとおもしろい現象です。(2017年08…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第37回 歴史的現在 (その1)

★結局、この回で言いたいことは、文末の処理の話。リズム感やスピード感の操作、あるいは人物の性別、年齢、あるいは性格の表現まで、文末は多岐にわたる役割を負っています。(2017年08月27日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第36回 翻訳は芸術か? (その4)

★文芸翻訳はやはり「表現」活動だと思います。「作業」だと思ったらおしまい。能動的な芸術活動だと考えた方がいい。(2017年08月27日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大それたお題で、よくもこんなに長々と書いたものだと思いますが、…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第35回 翻訳は芸術か? (その3)

★翻訳をする時、あるいは翻訳学習において、あるべきひとつの正解にむかって日本語を考えるのではなく、自分なりに表現しようとすることが大事ではないでしょうか。「模範解答」なんてない、と思ったほうがいい。(2017年08月26日「再」再録)★ ーーーーーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第34回 翻訳は芸術か? (その2)

★文学は、いや文章は、平面上に記された文字という記号の連続で、よほどの速読術の達人でない限り、読者は一文字ずつ、順にたどっていくことしかできません。つまり、絵画や彫刻といった空間を占める芸術とちがって、文学は読者の「読む」という行為によって…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第33回 翻訳は芸術か? (その1)

★大上段にふりかぶったタイトルですが、一度は考えておくべき問題ではないかと思います。「文芸翻訳」は、「文学翻訳」と言ってもいいかもしれません。自意識過剰だと言われるかもしれませんが、フィクションを翻訳する時、当然、自分は文学に携わっているの…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第27回 かな漢字のこと

★表記にこだわるわけは、最初に編集者さんに訳稿を出す時に、できればそのまま本にしてもいい形にしておきたいからです。もちろん、そんなことはできるわけはないのですが、それでも、そういうつもりで原稿を整えたい。そうすると、かな漢字の表記だけでなく…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第28回 "healing" は「癒やし」か?

★原書に何度も出てくるある単語を、日本語でも一つの訳語に統一して訳すのがむずかしいことは、第23回「"very"はとてもか?」の回でも触れました。この回では、さらにそれがキーワードに近い言葉なのに、訳語を統一できなかったケースを扱っています。簡単に…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第25回 サッカーを訳す

★昨日は土砂降りの雨の中、埼玉スタジアムに行ってました。最後、危なかったですが、レッズはFC東京に勝ち、とりあえずひとつ順位を上げました。堀体制になって、気のせいか、選手がのびのびやっているように見えます。ダービーには勝てなかったものの、シャ…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第24回 インチとセンチ

★結局、日本の作家が書くとしたらどう書くか、その状態にできるだけ近づけよう、ということなのだと思います。(2017年08月19日「再」再録)★ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この回で例としてとりあげたのは、『王国の鍵4 戦…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第23回 very は「とても」か?

★もちろん、very は必ず「とても」と訳すわけではないのですが、自分の訳本を調べたら、それが如実にわかったので、ちょっとびっくりしました。そう、機械的に訳語を決めてはいけません。と、自分で言いながら、つい……。(2017年08月18日「再」再録)★ ーー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第22回 出だしは力が入るもの

★出だしが読みにくいと、読んでもらえない(買ってもらえない)んじゃないかと心配になります。原作者も、きっとかなり力を入れて書くんじゃないでしょうか。まずは1ページ読ませないと、そして、そのページをめくってもらわないと。(2017年08月17日「再」…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第21回 タイトルはだれが決める

★九月刊行の『オオカミを森へ』は、原題が "Wolf Wilder" なので、パターン②の「原題直訳」と、パターン③の「新しいタイトル」の折衷ですね。体言止めではないので、『明日に向かって撃て』型、いや、助詞で終わっているので、『去年マリエンバートで』型か…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第19回 第二外国語

★九月に出る新刊、『オオカミを森へ』(キャサリン・ランデル作、小峰書店)では、ほんの少しロシヤ語が出てきます。ほんの少しね。あれくらいなら大丈夫。(2017年08月15日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二外国語、に遭遇したのは、大…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第18回 リーディングのディテール(その3)

★リーディングは、翻訳書という形ではあれ、本を世に出すための第一歩と言ってもよく、もっと大切にすべき仕事ではないかと、この頃強く思うのですが、どうでしょう? 出版社も、そこのところをもっと真剣に考えてほしい。(2017年08月14日「再」再録)★ ー…

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第17回 リーディングのディテール(その2)

★この回で「すべてのレジュメは主観的」と書いていますが、ほんとうにそうだと思います。その「主観」が、世間とズレているかどうかは、また別問題ですが、ズレていてもいいんじゃないでしょうか。(2017年08月13日「再」再録)★ーーーーーーーーーーーーー…