翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

サンヤツ広告

 サンヤツ広告、という言葉をご存知でしょうか?   これです。新聞一面の下段に並んでいる書籍の広告のこと。

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 あれ、こんなところに……。

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 ちょっとわざとらしかったですね。昨日、3月23日の読売新聞朝刊一面の広告です。

 

 こういう広告を、「サンヤツ広告」というのだそうです。知らない言葉だったので調べてみると、「サン」は記事三段分、「ヤツ」は横八分割だから。もっとも、今の新聞は、活字を大きくしたからなのか、縦は全体で昔の15段ではなく、12段しかないようです。ですから、「サンヤツ」は、三段分はなくて、二段ちょっとしかありませんが……。

 面白いのは、各紙とも、一面の下段は、基本、本の広告しか載せないらしいです。もっと広告費がとれる業界や商品があるのだけれど、出版と新聞の親和性や一面のイメージを保つ目的があるそうです。偉い!

 さらに、サンヤツには、細かい規制があり、写真やイラストはなし、活字は明朝かゴシック系のみ、網がけやベタもだめ、「?」や「!」を大きくしたら、ダメ出しされることもあるとか。ですから、各出版社のサンヤツ担当さん(がいるらしい)は、工夫を凝らして原稿を作るそうです。なんと、読売出版広告賞には、サンヤツ広告対象の賞まであります。

(もっとも、時おり、朝日新聞には、カラーの図版を使った児童書の広告が並ぶことがありますから、バリエーションがあるんでしょうね。六分割の「サンムツ」のこともあるし、今朝の朝日は、四分割で、カラーの男性雑誌の「サンヨツ」(?)でした。)

 

   上の写真のサンヤツを見ると、各社とも、それぞれ推したい本一冊のタイトルを印象づけようとしているのがわかります。でも、左から3番目、汐文社だけは、横書きで5冊のタイトルを載せています。そしてよく見ると、後藤健二さんの著書が4冊あるのがわかります。そう、IS(イスラム国)に拉致されて殺害されたジャーナリストの後藤さんですね。これはこれで、おっ、と思わせます。

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   こうして、この狭いスペースに、作り手の想いや意匠が凝らされていると思うと、なんだか愛おしくなる三段八割ではあります。

 

   というわけで、我が訳書も、よろしくお願い申し上げます。(M.H.)

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