翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ヴォーンダ・ミショー・ネルソン

 "The Horn Book Magazine" の最新号が届きました。この雑誌は、アメリカの児童文学やYA文学についての記事や新刊紹介が載っている隔月誌で、もう、何年も定期購読しています。

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 この2015年3・4月号の記事に、わたしの翻訳した『ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯』の作者、ヴォーンダ・ミショー・ネルソンが、昨年10月の会合で行なった基調講演を書き起こした記事が載っていました。ヴォーンダさんは、ルイス・ミショーの弟の孫にあたる人で、児童文学作家であると同時に、ニューメキシコ州の公共図書館司書でもあります。

  興味のある方は、こちらのホーンブックのサイトに行くと、全文が読めます。

www.hbook.com

 

 記事には、最初に司書の悩みとして、貸し出し実績の良くない本を棚からぬいていく辛さ、人気はないけれど、良書である古典を残しておきたいという気持ちなどが綴られています。

 また、黒人として、黒人を描いた本を黒人の子どもたちに読んでほしいという気持ちや、一方で、黒人作家でなければ黒人が主人公の本が書けない、というのはまちがいだ。すぐれた作家なら、主人公の人種に関係なく良い本が書けるはずだ、と訴えています。

 さらに、売れ筋の本に多額の宣伝費をかけてさらに売りまくる商法に疑問を呈し、小出版社や価値ある作品、すぐれた作家への資金援助を訴え、ALS患者のために、FacebookやYoutubeで、有名人が氷水をかぶって資金を集めた、"ice bucket challenge" の発想で、子どもの本のための資金集めができないものか、と言っています。

 

 大賛成ですね。子どもの本には、もっとお金を使っていい。図書館の予算が削られていると聞くのはほんとうにつらい。子どもは自分じゃ本を買えないんだから。それに、良い本を作っている小さな出版社は、どこもぎりぎりでやっているんだと思います。子どもの本の作家・画家、そして翻訳者も経済的には大変です。

 セレブじゃないけど、かぶれ、と言われれば、氷水、かぶりますよ。

 

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 これは、記事の一部を写したもの。

 上は、"Bright April"という作品の挿絵。調べてみると、1946年に発表されたこの作品は、Marguerite de Angeli (1889 – 1987)という女性作家(白人だと思います)が挿絵も描いていて、初めて黒人差別を描いた子ども向けの本だそうです。

 下は、ヴォーンダさんの子どもの頃の写真。うーん、そっくり。

(M.H.)