翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

柏の本屋さん、「ハックルベリーブックス」

 昨日は、柏駅から歩いて数分のところにある、子どもの本の店、「ハックルベリーブックス( http://www.huckleberrybooks.jp )」に行ってきました。

f:id:haradamasaru:20150807093714j:plain

「文学のゆうべ」という催しで、この日は「ミシシッピー・ナイト」と称して、店主の奥山さんが、二年前にアメリカに行ってきた時の見聞をおりまぜて、マーク・トウェインのこと、『トム・ソーヤーの冒険』、『ハックルベリー・フィンの冒険』のことなどを話してくださいました。

 

 トム・ソーヤーやハックルベリーのことを考えたのは本当にひさしぶりで、子どものころに抄訳版で読んだことがあるだけでした。奥山さんは、なにせお店にハックの名前をつけるくらいですから、トムとハックの大ファン。この二年前の旅行の時は、舞台となったハンニバルという町やメンフィス、ニューオーリンズなども回ったそうですが、なんといっても、一番行きたかったのが、ミシシッピー川とオハイオ川が合流する場所にあるカイロという町だったそうです。写真を見せていただいたのですが、海のように広々とした二つの川が交わる地点は、アメリカの広さや、昨日のお話のポイントでもあった、川の魅力や川が象徴するものをよく表していると感じました。

 奴隷解放の問題など、社会問題を含んだ児童文学としては、かなり早い出版で、『トム・ソーヤー』が1876年、『ハックルベリー』が1885年です。奥山さんのお話では、当初は、お金持ちの家に個別訪問で本を売っていたらしく、豪華な革装で、調度品の意味もあったそうです。『ハックルベリー』から、美しい川の描写も紹介してくださいましたが、本当の良さは、大人でないとわからない作品なのかもしれません。今度は完訳で読んでみようかと思いました。

 

 さて、今回、ハックルベリーブックスさんを訪ねた目的は、このミシシッピー・ナイトのほかにもありました。ひとつは、奥山さんが飼っているフクロウのフーちゃんに会うこと。

f:id:haradamasaru:20150807095154j:plain f:id:haradamasaru:20150807095233j:plain

 リラックスしていると、右の写真のようになるのですが、昨日、写真を撮った時は、緊張して、左のように、ほっそーくなってました。このあと、ご主人の手にのって、安心したふーちゃんは、ふっくらとしてくれたのですが、その写真は遠慮しておきました。右の写真は店内に飾ってあった写真を写したものです。いやあ、でも、ほんとにきれいな、美しい鳥です。間近にああいう生き物を見るというのは、不思議な気持ちにさせられます。

 

 もうひとつの目的は、10月11日〜18日に、ハックルベリーブックスで開かれる、「本まっちArt展」というイベントの一環で、10月12日(月・祝)に、わたしがトークイベントをすることになったので、その打ち合わせでした。

 詳細は、また告知しますが、このイベントのコンセプトが、「さまざまな人がかかわり、時間・空間をこえて創り出される本。一冊の中に、はるかな空間や遠い時間を容れて届けられる本の、アート(総合芸術)としてのおもしろさを伝える。」ということで、原画の展示や、装幀の比較などが中心となります。

 ですので、わたしも、自分が翻訳した本の原書と訳書の装幀の比較や、そこにこめられた画家や装幀家、編集者の意図などについて、わたしなりに話をしてみようと思っています。また、こうしたアートとしての本、つまり、物としての本を扱うリアル書店のことを、拙訳『ハーレムの闘う本屋』をからめてお話ししたいと思っています。

 

 昨日は、奥山さん、フーちゃん、紹介してくださったFさん、そして、帰りの武蔵野線の中で、創作の裏話などをしてくださった、児童文学作家の濱野京子さん、そのほかの出席者の皆様、ありがとうございました。

 また、10月に。(M.H.)