翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

原稿から作品へ

 8月16日の記事に書いた通し訳の終わった作品の、読み直し・修正が終わりました。これでいったん、編集者さんに送って読んでもらいます。

 写真は原作者。って言っても、これじゃどんな人かわかりませんよね(笑)。彼が北壁からエベレスト登頂に成功した時の写真です。今回の作品にはルートこそちがえ、その時の体験が存分に生かされています。いずれ詳しい紹介ができると思いますが、しばしお待ちを。

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  原稿のことですが、今回は、プリントアウトでチェックしたものを、パソコン画面で修正入力。その後、パソコン画面で最初から通しで読みながら直すという作業を2度やりました。つまり、3回読み直したことになりますが、それでも、修正点は毎回見つかります。やればやるだけ見つかると思いますが、無限に見直すわけにも行きませんからね。

 面白いのは、これまでは、ちまちま細かい部分を調べたり、訳語を考えたりしていたので、あくまで「原稿」としか見ていなかったものが、通し読みすることで、だんだん「作品」になってくることです。読むスピードが、ふつうの読者に近くなっていくことで、ストーリーの流れや、主人公の気持ちの変化、動きの迫力などが感じられるようになります。それによって、不自然な訳文や、つじつまのあわない部分に気付くという効果もあるのですが、それ以上に、言葉の羅列だったものに命が入ってきて、自分で訳した文章なのに、心が動かされるようになっていくのがうれしいですね。なんとも不思議な感じ。作品が生まれかけている、というか、原作があるのですから、生まれ変わりかけている、というんでしょうか。

  でも、ここまでは、全部わたし一人の目によるブラシアップです。これが編集者さんや校正者さんの目を通すと、またちがった視点での発見や指摘があり、さらにいいものに仕上がっていくと思います。いくら丁寧に見ても、一人の視点では限界がありますから。一応、作品になりかけているので、この先は、ただの「作品」から「傑作」になるよう頑張らないと。

 

 さて、天気さえ良ければ、ここでツーリングに出かけるところですが、ずっと雨の予報です。しかたないですねえ。リーディングや次の翻訳にかかりますか。(M.H.)