昨日は、10月11日の記事にも書いた翻訳勉強会の第三回がありました。皆さん、よく調べて、訳文もよく考えてきてくださるので、こちらが改めて気づくことも多く、とても有意義な会になっています。せっかくの会なので、感じたこと、tips的なことを時々書きとめておこうと思います。
「読者の選択肢をせばめる」
翻訳にあたっては、どうしても原書の単語を日本語の単語に一対一でおきかえようとする心理が働きますが、目的は日本語としての作品を成立させること。英語の言葉にも日本語の言葉にも通常複数の意味があり、文脈によって意味がゆらぎます。しかも、日英の対照させた言葉の守備範囲はふつうズレています。ですから、訳者がその時考えている意味ではない意味を、読者が思い浮かべてしまうことがあります。翻訳者は、読者に思い浮かべてほしい意味へと誘導し、追いこんでいく意識が必要です。
それには、多義の言葉を避け、あるいは言葉を補い、あるいはほかの言葉と組み合わせて、できるだけ別の意味にとられない文章にしていく工夫が必要だと思います。もちろん、多義であること、言葉の二重性が意図的に用いられている場合もあるはずですから、そこは読者の判断する余地を残し、逆に迷わせなければなりません。
「言葉を悪目立ちさせない」
言葉は粒立っていなければならない場合もありますが、往々にして辞書の訳語をそのまま使ったり、少し格好をつけようとすると、周囲からその言葉だけが浮いてしまうことがあります。わかってやるならまだしも、無用な目立ち方をさせないようにしなければなりません。
ほかにも、話の中でいくつかコツのような話をしているのですが、忘れてしまいました。メモっておかなきゃ。また、次回、書きます。
昨日の一番の驚きは、参加者のお一人が、わたしが非常勤で勤めている小さな学習塾に、高校一年生の時に在籍していたことがわかったこと。わたしが働き出す前の話ですけどね。びっくりです。世間はせまい。
(M.H.)