すごい偶然がありました。
おとといのことです。 あるイギリスの若い作家の処女作と二作目についての話。
処女作を途中まで読んで、「そこそこ面白いけど、好みじゃないなあ。でも、いいところもある」と思って、友人に「読んでみる?」と渡しておいたら、おとといの朝、その人から「面白いからレジュメを書いてみる」とのメール連絡がありました。そこで、念のため翻訳権が空いていることをエージェントさんに確認。ここまで、友人のメールをもらってから30分。
そのわずか15分後、ある編集者さんから、同じ作家の2作めのリーディング依頼のメールがわたし宛に届いたのです。なんたる偶然。なんか運命的じゃないですか。もちろん、だからといって、いい作品かどうかは読んでみないとわかりませんが……。ついでに、処女作のレジュメも読んでもらうことになりました。ラッキー。
以前、こんなこともありました。
あるエージェントさんに原書を借りに行った時のこと、何冊か紹介されたほかに、「これは出版社に紹介したいので、貸せないんですよね」というプルーフがありました。そうしたら、 二、三日経って、まさにそのプルーフのリーディングをある出版社から依頼されたのです。
また、先日来ゲラをチェックしている『The Everest Files』、これも自分で買って原書を読んでいたのですが、しばらくして翻訳権が売れていることがわかりました。たまたま別件の問合せのついでに、「あれ面白いですよねえ」とつぶやいたら、そのエージェントさんの紹介で、まだ訳者を決めていなかった小学館につながりました。たぶん、ちょっと早くても、ちょっと遅くても、仕事につながらなかったと思います。
もうずいぶん前ですが、徳間書店から出したロバート・コーミアの『ぼくの心の闇の声』も、原書を自分で買って読んでいたものを、「面白いですよ」と徳間の編集さんに言ったら、ちょうど翻訳権をとったばかりで、まだ訳者が決まっていなかったので、翻訳させてもらうことになった作品です。その時はまだ、版権のことなどよくわからず、あっけにとられて、しばらく本当に自分が翻訳するのか疑っていたくらいでした。
まあ、運がいいといえばそれまでですが、たぶん、これは児童書の翻訳コミュニティが意外に狭いからなのではないかと思います。編集者さん同士、横のつながりもありますし、出版社を移籍する人もいますし、版権エージェントの児童書担当も、そんなにたくさんいらっしゃるわけじゃありませんから。
加えて、旬の作家のすぐれた作品については、そこそこ同じような情報が流れているので、積極的に情報を追っていると、あちこちでクロスするのだと思います。今回リーディングを依頼された作品も、テーマや設定は書評誌で見て知っていました。もちろん、知らない本や作家のほうが断然多いのですが、少し情報を集めているだけで、こういう偶然は起きるように思います。
こうして記事を書いているあいだに、PDFで送られてきた作品のプリントアウトが終わりました。さっそく、読んでみるとしますか。
(M.H.)