塾の授業が終わると、毎回のように話しかけてくる高校一年生のBくん。先日は読みおえたばかりの本の話でした。
Bくんがいつもよく読んでいるのはライトノベル。わたしは読んだことがなかったので、以前、彼から借りて読んでみたことがありました。決して読みやすい文体ではなかった。センテンスの長い、うねるようなリズムの文がずっとつらなっていた記憶があります。作品名や作者は忘れてしまいました。ライトノベルという分類は、読みやすさではなくレーベルによることもあるのだと思います。作家によってはそうとう文章の難易度が高いのだとわかりました。
それはともかく、今回、彼が読みおえたばかりの本は、ライトノベルではなく、御巣鷹に墜落したJAL123便を題材にした本でした。その前日も、10分間の休みを惜しんで、授業が始まるぎりぎりまで読んでいましたっけ。
「先生、これ、ノンフィクションだと思ってたら、なんか、最後に明らかフィクションになってて、あれえ、って感じなんですけどぉ……」と一生懸命話してくれる。うーん、この気持ちわかるよなあ。読んだ本のことを人に伝えたくて、相手かまわずまくしたてる感じ。自分も高校生のころはこんな気持ちでした。というか、あまり話を聞いてくれそうな相手がいなかったので、読み終えると、その感動を次の本にむかうエネルギーにしていた気がします。
「ねえねえ、聞いてよ……」は翻訳者の原点。
「ねえねえ、翻訳するからさ、たのむよ、これ読んでみてくれない?」
そんな気持ちで今年も頑張ります。おもしろい本にたくさんめぐり合える、良い一年となりますように!
(M.H.)
(実家の庭のロウバイ。暖冬のせいか、黄葉した葉が残ったまま、花が咲いています。横を通ると、プンといい香り。)