翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

銀河系と銀河

 銀河系と銀河はちがうのです。

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 塾での授業中、過去問に出てきた other galaxies を「ほかの銀河系では」と訳していたら、Tくんが、「先生、細かいことですが、それは銀河系じゃなくて銀河です。銀河系と銀河はちがうって習いました」と言うではありませんか。なにーっ!

 

  調べてみると、たしかに彼の言うとおり、この地球がある、すなわち太陽系がある銀河を「銀河系」といい、その他の星雲というか、似たようなものを(わかってない感満載ですが……)「銀河」というらしい。つまり、「銀河系」は固有名詞で銀河のうちのひとつ。「銀河」は宇宙にたくさんある星の集まりというか、星雲というか、そういうものの普通名詞なのです。まぎらわしいので、われわれの暮らしているこの「銀河系」にも「◯◯銀河」という名前をつけようと言ってる人もいるらしい。実際、「天の川銀河」という呼称もある。

 英語では、「銀河系」は the Galaxy、または the Milky Way 、「銀河」は a galaxy, galaxies と区別します。うーん、そうだったのか。こんなこと習ったかなあ? 自分が中高生だった70年代には、こんな区別なかったんじゃないか? いや、理科をまじめに勉強してなかっただけなんでしょうね、たぶん。

 

 そういえば次の仕事にも関係ありそうだ、と思って、パラパラ原書を見ていたら、早くも9ページめに、"The Universe is made up of millions and millions of galaxies, . . . "、"In one galaxy named the Milky Way, eight planets travel around . . " という記述が。

 うへー! 危うく「この宇宙は幾千万もの銀河系でできていて……」とやるところでした。次の the Milky Way もどうするか? 「天の川」? それとも「銀河系」? いや、その前に、millions and millions of はどうする? 銀河っていくつくらいあると考えられてるんだろうか? 数は具体的に出さないで、ものすごく多いってわかればいいのか? 

 いやあ、この調子だとまずいぞ。知らないことがたくさん出てきそうだ。ああ、そうだ。担当編集者さん、用語チェックは手伝ってくれるって言いましたよね? ね? 

 

 

 ともかく、Tくん、ありがとう。もつべきものは優秀な生徒です。

(M.H.)