翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

安保法制施行

 昨日、安保法制が施行されました。

 いろいろな思いがあります。安全保障の専門的見地から見れば、さほどおかしな法制ではないのかもしれません。安部首相は「ふつうの国になる」とよく言いますからね。でも、まったく納得できません。

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(『イラク戦争のアメリカ』(ジョージ・パッカー著、豊田英子訳、酒井啓子解説、みすず書房)表紙)

  前も書きましたが、なぜ日本が特別な国になってはいけないのか、と思います。そしてなにより、この法案を可決するまでの非論理的な進め方に大きな違和感を覚えます。法解釈と論理的な議論の末に多数決があるはずですが、そうなっていないところに憤りを感じます。

 参院選が近づくにつれ、介護や子育てなどに対する方針を打ち出し、選挙に勝てば、さらに改憲へと進むことは明らかです。前回の選挙の時はアベノミクスを前面に出し、安保や改憲などおくびにも出しませんでした。同じやり方で選挙を乗り切ろうとしていますし、その前に定数是正には及び腰です。憲法学者や最高裁の判決をのらりくらりとかわしておいての進め方にはほんとうに腹がたちます。これで、馬鹿にされている、と思わない人はあまりにも鈍感です。

 

 民進党ができました。自民党への反対を示す投票先ができたと言えるのかもしれません。これも前に書きましたが、自民党以外の政党が政権をとれば、官僚との連携がうまくいかず、いろいろなところがぎくしゃくし、経済的な停滞も起きるかもしれません。前回の民主党政権の経験からもそれは予想されます。でも、手続きをごまかしながら恣意的な法律を通す政権よりも、とりあえず、論理的整合性を求める政権のほうがましです。そこに踏ん切りがつかず、大企業中心の景気回復に頼っての投票行動はやめてほしい。

 背に腹は変えられない、というかもしれませんが、頭や心はどうでもいいんですか、と言いたい。

(M.H.)