翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ゲラそれぞれ

 ゲラに赤を入れてます。

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 ゲラの扱いは、出版社さんによって、というか、印刷所さんによってなのか、いろいろです。今回はこんな風に、ホチキスで留めるところに黄色い当て紙をして、ハンコが押してあります。しかも、同じゲラがもう一組、控え用としてあります。

 昔から文芸出版をやっている出版社からもらうゲラは、わりに扱いが丁寧というか、細かいというか、上の写真のように、数章ごとに綴じてあったり、担当者の名前を書く欄がハンコで押してあったり、校正者の名前が書いてあったりします。コピー機もなかった時代から、原稿用紙の原稿に赤を入れ、活字を拾って版を組み、ゲラを刷ってチェックを入れていたのですから、受け渡しに細心の注意を払っていた名残なんでしょうね。

 赤入れも、わたしは消ゴムで消える赤ペンでやってますが、先日の勉強会のメンバーの話では、今でも消えるペンは使えないという出版社さんもあるようです。わたしなんか、以前、担当編集者さんに、「書いたり消したり多いんで、わかるように書きますから鉛筆でいいですか?」と頼みこんで、黒い鉛筆で赤入れ、じゃないですね、黒入れをしてたこともありました。その編集者さんは、「いいですよ」と軽くOKしてくれましたが、次に仕事をした出版社さんで同じことを頼んだら、この人は頭がおかしいんじゃないか、という顔で「ダメです」と言われました。ま、それがスタンダードでしょう。

 

 数えてみると、今赤入れしている作品で10社めの出版社さんとの仕事です。次の作品も、その次の作品も、仕事をするのが初めての出版社さんなので、11社、12社めということになります。ゲラだけじゃなくて、校正者の有無とか、漢字かなを決める手順とか、タイトル決めとか、表紙のこととか、各社それぞれで、そういうのもまた出版の仕事のおもしろいところです。

(M.H.)