翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

装幀という仕事

 このブログを Facebook に上げ始めたのは去年の暮れですが、半年のあいだに、いろいろな人が Facebook を通じてコンタクトをとってくださり、よかったと思っています。

 先日は、装幀家の鳥井和昌さんからメッセージが届きました。鳥井さんには、なんと、わたしの初めての訳書『ミッドナイト ブルー』の装幀をしていただき、その後も何冊か、装幀をしていただいていたことがわかりました。

f:id:haradamasaru:20160511132015j:plain

(『ミッドナイト ブルー』ポーリン・フィスク作、装画は伊藤桂司さん、ほるぷ出版)

  1993年の刊行ですから、今から23年前です。わたしはまだ36歳でした。この本は初めての訳書で、しかも紆余曲折があって出た本なので、とても思い出深い作品です。翻訳のことも、出版のこともよくわかっていなかったし、訳文はいろいろ問題があるのではないかと思います。怖くて読み返せません。

 

 そのあとも、鳥井さんには何冊かお世話になっていることが判明。「判明」なんて言い方をすると、なんだか他人ごとみたいですが、装画や装幀をどなたが担当するのか決めるのは、もちろん編集者さんの仕事で、相談を受けることはありますが、たいていは出来上がってきた見本を見て、「ほおーっ」とか、「わーっ」とか言うだけです。

 でも、以前も書きましたが、装幀や装画を担当する人たちは、当然、わたしの訳文を読んでデザインや絵柄を考えるわけで、そういう意味では、世に出る前に翻訳者の訳文を読んでくれる、編集者に続く第2の読者であると同時に、本作りの同志でもあるのです。それでいて、なかなか直接お会いしたり、やりとりする機会がなく、訳書のビジュアルをだれが作ったのかは、ちゃんと憶えていないことが多くて、申し訳なく思います。

 

 感謝の気持ちをこめて、装幀・鳥井和昌さん、訳・原田勝の本を以下に挙げますので、即席展覧会をお楽しみください。

 

f:id:haradamasaru:20160511132431j:plain

(『ぼくの心の闇の声』ロバート・コーミア作、装画は高橋洋々さん、徳間書店、1997年)

 大好きなコーミアの作品です。カバーの絵もいいですね。原画は板に描いた絵なんだそうです。よく見ると、木目が透けて見えます。

 

 

f:id:haradamasaru:20160511134318j:plain

(『〈ナイト・シー〉の壁をぬけて』オートー・クーンツ作、装画は大鹿和子さん、徳間書店、1998年)

 ヤングアダルトむけSFホラー。こういう作品、またやりたいなあ。

 

 

f:id:haradamasaru:20160511134359j:plain

(『二つの旅の終わりに』エイダン・チェンバーズ作、装画は松尾たいこさん、徳間書店、2003年)

 この少年、最初のアイデアでは立ってたんですが、編集者さんの意見で走りだしました。

 

 

f:id:haradamasaru:20160511134821j:plain f:id:haradamasaru:20150916092742j:plain

(『ウェストール短編集 真夜中の電話』ロバート・ウェストール作、装画は宮崎駿さん、徳間書店、2014年)

 宮崎監督のカバー絵に目が行きますが、中の表紙と見返しの色がわたしは大好き。カバー絵に負けない、でも、邪魔しない色使いに、装幀家のセンスが現われていると、勝手に思っています。どこか和風なのもいい。

 

 というわけで、20年以上にわたり、鳥井さん、わたしの訳書の装幀を手がけてくださっていたのでした。お会いしたことはないのですが、なんだか、戦友の気分です。ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。

(M.H.)