読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

翻訳勉強会(2−5)

 昨日、勉強会で話題になった原文とその訳を書いたら、面識のある翻訳者さんからメールをいただきました。問題の箇所は、"at the top of the porch steps" です。

Paperboy

 

 昨日の記事では、"standing at the top of the porch steps" の訳文を、「ポーチに上がる階段の上に立っていた。」としてありました。

 その方の指摘は、これは「階段の上」ではなく、「階段をのぼりきったポーチの上」ではないのか? ということ。階段の "top" とはどこなのか? 踊り場に上がる一段下の段なのか、それとも上りきった踊り場そのものなのか? たぶん、上りきった踊り場の上をさすことが多いのではないかと思います。ここではポーチの上ですね。じつは、わたしもそう思っていて、そのつもりで「階段の上に立っていた」としていたのですが、「階段をおりてきたところ、階段の途中」という意味に読まれてしまうことがわかりました。うーん、たしかに、そう読むのがふつうかもしれません。

 

 日本語で「階段の上」と書いてあったら、それは「階段の途中」なのか、それとも「階段をのぼりきった踊り場や次の階の床の上」なのか? いつもの手で、グーグルで「階段の上」と入れて画像検索してみました。なるほど、階段の途中に立ったり座ったりしている人たちの写真がたくさん出てきます。(どうでもいいけど、結構、カップルでポーズ決めて座ってる写真が出てくるのはなぜでしょう(笑)。)

 でも、日本語の「上」には、「表面に接して上」という意味のほかに、「高いほうの端」や「離れて上、上空」などという意味があるはずです。思いついて、「階段の上から」と「から」をつけてググってみました。すると、階段を上りきったところから下を見おろした写真がわんさか出てきます。ふーむ。

 じゃ、「階段の下」はどうだ? すると、階段を下りきった下の踊り場や地面から、階段を見上げている映像がたくさん出てきます。ふむ。さすがに「階段の裏」の写真は出てきません。「階段の下の物入れ」とすれば、それはちがった結果が出てくるでしょうが。

 

 日本語はむずかしい。いや、言葉はむずかしい。

 で、どうしたか。階段を省くことにしました。「ポーチの上から見おろしている」という表現にしたのです。階段、どうするの? ああ、次の段落で、この女の人、ポーチの階段おりてくるんで、情景はそこでわかると思って。

 担当編集者さん、印刷所の方、ご迷惑おかけしました。そして、指摘してくださった翻訳者のIさん、ありがとうございます!

 

 ちょうど、昨日、この作品、『ペーパーボーイ』の表紙の色校を見せてもらったのですが、感動ものです。いいなあ、この表紙。色使いや濃淡で、光と影が美しく画面上に捕らえられ、時代の空気や季節感まで表わしています。装画担当は丹地陽子さん。丹地さん、ありがとうございます。早く見本が見たい。そして皆さんにもお見せしたい。

 しばしお待ちを!

(M.H.)