翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

虹の下で

 台風一過の昨日の夕方、いつもの散歩コースに歩きに出ました。出会ったのが見事な虹。

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 こんなきれいなアーチは生まれて初めて見たんじゃないでしょうか。行きあった人たちは、みな足を止めて写真を撮っていました。言葉を交わした方が三人。

 

 一人目は、この川の土手の上で。

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 70代とおぼしき女性。左右に杖をついてゆっくりと歩いていました。わたしが追いついていくと、ふりむいて、「雨が上がってよかったですねえ。涼しくもなったし」とひと言。「ほんとうに」と答えると、おばあさん、そこから引き返していきました。

 

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 西の空、秩父の山と低い雲のあいだから射す西陽に目を細めていると、サアッと雨が降ってきました。まさに驟雨。おばあさん、濡れちゃうなあ、と思ってふりかえると、雨と西陽のおかげで、みごとな虹が見えたというわけです。

 写真を撮っていると、散歩中と思われる、女性にしては背の高い30代くらいの彫りの深い顔立ちの方が近づいてきて、「きれいですねー」その発音と容姿から、ブラジル人のように思えました。

 

 東の空にかかる虹を、何度もふりかえりながら歩いていると、虹がくっきりと二重になってきました。

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 マルチーズを抱いた、わたしと同年代の女性と目が合い、「きれいですね」と声をかけると、「いいことあるかしらー。お願いがかなうかもねー」と返事が返ってきました。アクセントからして、中国か韓国、どこかアジア出身の方のようでした。

 

 ものの20分くらいのあいだの一大スペクタクル。言葉を交わした三人の女性たちが、なんだか、今の日本社会の縮図のようで、でも、その上にこんなにきれいな虹がかかっていたことを、偶然とはいえ、希望の徴と思いたい。

(M.H.)