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翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『弟の戦争』舞台化

 ロバート・ウェストール作、拙訳『弟の戦争』が、今年の12月に劇団俳小によって舞台化されます。昨日、脚本が届きました。

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 じつは、この作品の舞台化は4度目です。

  2004年の青年劇場による『GULF ─ 弟の戦争』、2005年の劇団うりんこによる『弟の戦争 ─ GULF ─』、2008年の桜美林大学パフォーミングアーツプログラムによる『弟の戦争』、そして今回の劇団俳小による『弟の戦争』です。

『弟の戦争』の原作は、湾岸戦争直後にウェストールが現代の戦争のあり方に疑問を抱き、一気に書き上げたと言われる作品で、イギリスの中流家庭の子、主人公トムの目から描かれる物語です。主軸となるのは、トムの弟アンディに砂漠で戦うイラク人の少年兵の魂が乗り移ってしまう、という出来事なのですが、その周辺に、父親や母親、大人たちの考え方、アラブ系の精神科医の話、トムと父親とのラグビーシーンなど、短い作品ながら、考えさせれるエピソードの多い作品です。

 場面転換の妙やテーマ性、そして作品を貫く精神性が、舞台化される理由なのかもしれません。

 青年劇場の舞台は観ましたが、篠原久美子さんの脚本は、わたしの翻訳した文章をかなり忠実にせりふにとりいれているので、客席で聴いていると、とても不思議な、そして背筋がぞくぞくする気持ちになったのを覚えています。

 うりんこの舞台(鐘下辰男さん脚本)はビデオで観ましたが、こちらは原作をデフォルメしてあり、舞台装置は終始鉄パイプで組んだ足場のようなものだけ、という、抽象性の強い舞台でした。

 今回の脚本も、また、篠原さんなので、わりと原作に忠実な舞台になるのではないかと思います。いずれにしても、ウェストールの原作から、原田の翻訳、そこから、それぞれの脚本家の方の手をへて、活字の世界が舞台上の人間の動きや声に転化するというプロセスを思うと、感慨深いものがあります。

 

 今回の、劇団俳小第42回本公演「弟の戦争」は、2016年12月7日(水)〜11日(日)、池袋のシアターグリーン、ボックスインボックスにて上演されます。楽しみです。

 

弟の戦争

弟の戦争

 

 (1995年の翻訳なので、もう20年以上たってしまいました。駆け出しのわたしの翻訳は、編集者との二人三脚でした。)

(M.H.)