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翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ユリカモメの頭は……

翻訳の周辺

    昨日撮った写真です。神田川の護岸コンクリートの上に並んでいるのは、東京都の鳥、ユリカモメ。調べてみると、英語名は black-headed gull 。

    ん?    頭は黒くないぞ。

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     どうやら、この白い頭の羽は、冬毛らしい。夏は黒くなるそうです。日本にいるのは冬。欧米でも高緯度の寒冷地では夏にいるのでしょう。英語版のウィキペディアを見ると、首から上が真っ黒です。ああ、英語の head は首から上のことだった。でも、ほんとにこんなに真っ黒になるのかなあ。別の鳥といってもいいくらい。

( Black-headed gull - Wikipedia )

 

    そういえば、鳥や植物の名前は翻訳するとしっくりこないことがよくあります。先日の読書会の課題、『みどりのゆび』には様々な植物とその絵が登場します。オダマキの絵がきれいでした。好きな花なので、見つけてうれしかった。というか、それほど詳しくないので、わからない植物ばかりでした。

    気になったのはウマノアシガタ。何度か出てくるので、どんな花だろうと思って調べたら、キンポウゲ(金鳳花)でした。葉の形が馬の足型に似ているらしい。キンポウゲと訳してくれていたら、黄色い可憐な花が想像できたのに。と思って、もう少しよく調べてみたら、ウマノアシガタ(=キンポウゲ)の英名は Japanese Buttercup になっている。ん? なぜ Japanese がついているんだろう? おそらく『みどりのゆび』に出てくるウマノアシガタは、いわゆる日本でいうキンポウゲではないのかもしれません。フランス語はわからないしなあ。

 

 こういう問題にはしょっちゅう出くわします。翻訳中の作品に、jackdaw という鳥が出てきます。コクマルガラス(黒丸鴉)と訳していたのですが、ウマノアシガタと同じで、どんな鳥だか、たぶん読者は想像できないでしょう。わたしだって調べて写真を見て、ふーん、という感じ。カラス科の鳥には違いありませんが、少し小さい。調べ直してみると、日本や東アジアには生息しているものの、舞台となるロシアの西の方にいるのは、ニシコクマルガラス(西黒丸鴉)という種類だそう。辞書でも、リーダーズでは「コクマルガラス」ですが、ランダムハウスでは「ニシコクマルガラス」になっています。

 この鳥、物語の中で何度か出てくるのですが、「ニシコクマルガラス」では、そもそもどんな鳥がわからないし、長すぎる。うーん、どうするかなあ。カラスにしちゃうかなあ。

 

 ユリカモメを見て考えたことでした。

(M.H.)