翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

読書会『あしながおじさん』

 昨日は川越の絵本カフェ、イングリッシュブルーベルさんで、子どもの本の古典を読む読書会がありました。課題本は『あしながおじさん』。

《 Ehon Cafe - English Bluebell - 》

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 今日のスイーツは、作品の中に登場する(らしい。じつは、そこまで読めなかった)レモンジュレ。ティーはレモンバーベナと、レモングラスと、もひとつなにか(すみません)のティーでした。バイクで走って寒かったので、ティーはお腹が温まってうれしかった。

 肝心の本のほうは、わずかしか読めず、すみませんでした。子どものころに読んだ記憶はかろうじてあるのですが、たぶん抄訳だったのだと思います。

 

 上の写真に写っている谷川俊太郎訳と、光文社文庫の土屋京子訳をもっていきました。みなさん、岩波少年文庫の谷口由美子訳、福音館の坪井郁美訳など、いろいろ持参されてました。

 私は時間がなかったので、冒頭の数ページを見比べていったのですが、谷川さんの訳はすっとぼけた味があって面白かった。でも読みすすめると、ちょっとちがうかなあ、という感じ。土屋さんの訳は、谷川訳と比べるとおとなしすぎるんじゃないかと思いつつ、書かれた時代とか手紙文であることとか、ジュディの年齢とかを考えると、安定感があって安心して読める気がしました。

 原文とも少し比べてみましたが、谷川さんの訳も原文から逸脱しているわけではなく、言葉の選び方のちがいのようです。こうして古典はいろいろな人の翻訳が読めるので、面白いけど怖いですね。自分の翻訳も、そういう意味では one of them のはずなのに、たまたまほかに訳している人がいないから比較されないだけ、ということになります。

 翻訳勉強会で皆さんの訳文を比較することがあるのでよくわかるのですが、翻訳に好き嫌いはあっても正解はない、というところでしょうか。誤訳は論外ですが、一定の幅の中で、個性をもった翻訳が成立しうるのはとても興味深い現象でもあります。

 

 

 次回は『ミスビアンカ くらやみ城の冒険』。今度はしっかり読むぞ。

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 昨日は曇り空でしたが、これは数日前のケヤキ。いっきに散ってしまいそうです。

(M.H.)