翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ノンフィクションの興奮

 年明けから、ノンフィクションの翻訳をやっています。加えて、先週は、ある雑誌の冒頭の寄稿文の翻訳をやりました。どちらも訳していて気持ちがたかぶりました。いえ、日々、たかぶっています。

f:id:haradamasaru:20180207094512j:plain

 

 小説の翻訳では、訳文を推敲していく過程で、自分が訳している文章に興奮することがよくあるのですが、ノンフィクションの興奮はまた別物。積み上げられた事実や推論を読みながら、知らずにたかぶっていた気持ちの上に、筆者の心の中から出てきた言葉を、トドメのようにぽんとのせられたとたん、もういけません。「う、う、う……」とくる。

 小説は、ある意味、間接的です。作者の言いたいことをダイレクトに書くのではなく、ストーリーや心理描写や、あるいは登場人物のセリフにのせて語ります。でも、ノンフィクションやエッセイには、その縛りがありません。筆者の気持ちがストレートに言葉に現われる瞬間がある。そこに至る事実の分析は、もしかしたら、その気持ちを書きたいがために積み上げてきた、長いイントロなのではないかと思うことさえあります。

 

 

 ああ、こんな悠長なことは言ってられません。先は長い……。

 

(M.H.)