翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ちがう、ってことはわかる。

 訳語を考えていると、なんかちがうなあ、と感じることがよくあります。だからといって、ぴったりの訳語が出てくるわけじゃありません。まあ、その都度、それには理由があるわけですが……。

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 今日も1時間以上、うなっていました。

 行き詰まったのは、その作品ならではの言葉で、固有名詞というか、肩書きというか、そういう言葉でした。なので、日本語でもそのような言葉にしなくてはならないのですが、もともとが創作なので、定訳がありません。ですから手元の辞書、ネット上の辞書を調べまくり、ヒントをもらおうとします。英和辞典の訳語から類語辞典へ展開して、イメージを膨らませます。ちょっと古風な感じも出さなくてはならないので、日本の昔の宮廷の官位やら、軍隊の階級やら、あちこち調べまくります。でも、どれもしっくりこない。

 と、思ったら、超有名な作品のタイトルの原題に使われていた! よしっ、と思ったら、邦訳タイトルは別のアプローチで処理されていました……。うーん。こうなると、でっちあげる、いや、失礼、創作するしかない。でも、なかなか作品世界にマッチした言葉が浮かばない……。

 こういう時は、飛ばして先に進む、という手もあるのですが、基本的にそれは効果がないことはわかっているので、とりあえずのベストをひねりだすまでがんばること1時間半。ずっと考えてたわけじゃないけれど、1時間半。部屋を出て、うろうろしてたら、ぽろっと出た。そう、一生懸命考えてると、ぽろっと出るんです。どうして最初から候補に上がらなかったんだろう、っていう訳語ですが、とりあえず安心。最悪これでもなんとか行ける。

 

 と、思って、翌朝見たら、「なんじゃ、こりゃ?」ってこともあるからなあ。

 同業者のみなさん、どうしてます、こういう時?

 

 

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 光りは春、です。

 

 

(M.H.)