たぶん、初めて買った(読んだ、ではない)洋書は、"The Old Man and the Sea" のペーパーバックだったと思います。高校生の時、最初の2ページくらい、辞書を引きながら読みかけて、挫折した記憶があります。あのころの日本でも、ちょっとした大型書店に行くと、この本のペーパーバックは売られていたのですからすごいもんです。
翻訳中の『ペーパーボーイ』の続編『コピーボーイ(仮)』の中で、17歳になったあの主人公「ぼく」の愛読書が、この『老人と海』。
「ぼく」は、タイプライターで小説の一節を打っていくのが好きなのですが、この気持ちはよくわかります。タイプで打つという作業そのものが楽しいのです。で、有名な一節の引用が出てきたりするわけで、今や、原文はインターネットで読めてしまうから、あとは評判の高い小川高義さん訳を買ってきて参考に。
続編というのは主人公の成長が楽しみのひとつ。「ぼく」は五年前のあのナイーヴな感じを保ちながら17歳になってくれました。でも、つい、彼の成長を忘れて、『ペーパーボーイ』の時の幼さがセリフの端々に出てしまい、「もう、あの頃のぼくじゃない!」と叱られそうです。時おり「17歳、17歳、高校三年生」などとつぶやきながら訳しています。せりふもさることながら、一人称なので、地の文も気をつけないと。
『ペーパーボーイ』では、コンマのない文が特徴でしたが、今度はコンマあり、でも、少し文体が変わったかな。文の構造がしっかりしている気がして、「関係代名詞節をひっくりかえして訳したくなる文体」とでもいいましょうか。
この前まで訳していた、ジョン・ボインの "My Brother's Name Is Jessica" の、一文のむちゃくちゃ長い、頭からしか訳せない文体とは真逆です。
こんなに文体のちがう作品を訳すのも翻訳の楽しみのひとつ。
あ、前作で出てくる「老人」スピロさんはどうしているかというと……、それは読んでのお楽しみ。
存在感は抜群です。
あ、暑いです。クーラーかけてこもっているので、運動不足で太りました。筋肉落ちました。今朝、テーブルに手をついたとたんに腰が……。みなさん、お気をつけて。
(M.H.)