翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

買いこみました!

 新しい翻訳の仕事が入ると、関連の本を読まなきゃならなことがあります。昔は図書館に通ったものですが、借りた本は返さなくてはなりません。買ってしまえばいつも手元におき、あれっ、と思った時に調べることができます。

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 というわけで、買いこみました。アマゾンで、ポチポチッ、としたら、たちどころに配達されました。この中には古本も混じっています。絶版になってしまったものも買えるのが本当に便利。『ハーレムの闘う本屋』は、リアル書店の意義を再認識する作品ですが、アマゾンが便利なのも事実です。

 

 この写真を見れば、新作のジャンルが想像つきますよね。そう、山岳小説です。しかも、ヤングアダルト向け。YAで山岳小説というのは珍しい。翻訳されていなかっただけかというと、わたしの知る限り、もともと珍しいと思います。まあ、ゲイリー・ポールセンなどの、サバイバルものはありますけど。

 山岳小説を書くには、やっぱり山に登ってみないと書けないことが多いんじゃないでしょうか。夢枕獏さんや新田次郎さんはどうしたのか知りませんが、山屋特有の言葉とかメンタリティは、自分も登らないとわからないところが多いんでしょうね。YA小説書く人で登山する人、それも、高い山に本格的に登る人は少ないんじゃないでしょうか。

 日本は今、第何次か知りませんが、中高年を中心とする登山ブームです。でも若い人、とくに「山ガール」たちも登っているようですから、下手な翻訳をすると、この訳者ぜんぜん山のことわかってない、とか言われてしまいそう。わたしは中高生のころにボーイスカウトでキャンプはしましたけど、山に登ったのは丹沢に一度か、二度。

 新田次郎は読みましたよ。『孤高の人』は何度か読んだ気がします。『神々の山嶺』は気になってましたが、未読だったので、これを機会に読みはじめました。おもしろい! 来年、岡田准一の主演で映画になりますよね。岡田くん、最近、飛ばしてますねえ。そういえば、『岳』は読んでません。図書館にはコミック、おいてないよなあ。どなたか、『岳』の全巻、貸してくれる方いませんか?

 さて、肝心の翻訳のほうはどうなることか、やってみないとわかりません。今回買った『登山用語データブック』をパラパラ見ていたら、たちまち、「最近は、「ザイル」じゃなくて「ロープ」という人が増えている」という記述を見つけました。うーん。なんか、原田の読書体験から言って、「ザイル」じゃないと緊張感ないんだけどなあ。

 でも、まあ、毎回、程度の差こそあれ、作品ごとに知らない領域のことを調べながら翻訳していくのはおもしろい作業です。学生のころは、こういう調べものは大嫌いだったのに、人間の適性っていうのはわからないものです。

 

 ああ、原作のことは、また、いずれ。(M.H.)