翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

薮内正幸さんの原画展

    動物画の第一人者で、数多くの図鑑や絵本の挿絵を手がけた、ヤブさん、こと、薮内正幸さん(1940-2000)の原画展が、1月27日(水)から、柏の子どもの本のお店、ハックルベリーブックスでひらかれます。わたしは、この方の絵が大好きなので、ぜひ、多くの方に見てもらいたいと思い、紹介します。

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(薮内正幸美術館で買ってきたファイルの絵から、薮内さんの描いたヒメネズミ。)

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     薮内さんといえば、斎藤惇夫さんのガンバの冒険シリーズの挿絵でご存知の方も多いと思いますが、わたしはこの作品をつい数年前まで読んだことがありませんでした。調べてみると、最初の作品『グリックの冒険』が1970年の作品なので、わたしはすでに中学生、大人の本を読みはじめていたからなのでしょう。その後のテレビアニメ化や、アニメ映画化も知りませんでした。

    ですから、数年前に薮内さんを知った時は、その細密な動物画を見て、絵そのものの力に圧倒されたのでした。そして、じつは薮内さんの名前を知らないままに、サントリーの野鳥シリーズの新聞広告でその作品を見ていたことを知りましたし、それから『冒険者たち ガンバと15匹の仲間たち』も読み、山梨のサントリー白州醸造所の近くにある、息子さんがひらいている薮内正幸美術館にも何度か足を運んでいます。

 薮内さんの絵はほんとうに細かいところまできっちり描きこんでいて、動物や鳥を実物そっくりに描いているのに、どこか温かみがあり、すばらしいです。挿絵や図鑑で見てももちろんいいのですが、原画で見ると、毛や羽毛を描いた細い筆の線まで見えて、またちがった感動があります。生態や骨格などを研究しつくした結果が、絵に命を吹きこんでいるのでしょう。

 『冒険者たち』では、ネズミやイタチやアホウドリを本物そっくりに描いているのに、人間のように言葉を話しているのが不自然でなく感じられるところが不思議でした。去年再映画化されたアニメ映画はCGで作画されていて、薮内さんの絵とはまったく異なります。あれはあれで可愛らしいのですが、ぜひ、ヤブさんの絵でガンバの冒険を読んでみてください。

 ただ、浦和サポとしては、ガンバ大阪がアニメ映画とタイアップしていたこともあり、あんまり、「ガンバはいい、ガンバはすばらしい」と言いたくありませんが。(笑)

 

 薮内さんは幼い頃から絵が好きで、高校卒業後、その画力にほれこんだ福音館の松居さんが関西から東京に呼びよせ、仕事を世話したそうで、このあたりの編集者と作家の関係が今ではなかなかない関係で、それを知ってますます薮内ファンになりました。その時の松居さんからの手紙を美術館の展示で見たことがあるのですが、それは熱い文面でした。

 白州の美術館はアカマツや落葉樹の森の中にあります。毎年、展示を変えているので、行くたびにちがった絵が見られます。

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( 薮内正幸美術館 2014.7月、原田撮影)

 

 

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 これも美術館で買ってきた、薮内さんのハヤブサの絵を使ったスマホケース。もう1年半近く使っているのですが、焼き付けで、まったく絵がはげません。ただ、ハヤブサの迫力に、子どもが怖がるのが玉に瑕ですが……。

(M.H.)