25日(月)は翻訳勉強会の日でした。この日は、前半で、会員の皆さんが書いた課題作品のリーディングのレジュメ(あらすじや所感やその他情報をまとめたもの)の比較・検討をやりました。わたしもふくめて9人のレジュメは、みなそれぞれの書き方がちがっていて、とてもおもしろかったし、参考になりました。
あらすじの書き方にどんなパターンがあったのか、列挙しておきます。着眼点として、体裁から見たものと、文章のタッチから見たものが混じっていますが、ご容赦を。
● 原作に出てくる順番に出来事を書いていく。(作品の流れがわかる反面、登場人物が多かったり、離れたところの記述が点でつながっているような場合はわかりづらい。冗長になりがち。)
● ストーリーをいったん咀嚼して、まとめなおす。あるいは、登場人物や場所などの切り口ごとに段落を分けて書く。(わかりやすくなる反面、やや、引いた書き方になるので、臨場感や流れが伝わりにくいことも。)
● 章ごとにまとめる。(作品の流れや全体のボリュームがよく伝わるが、どうしても分量的に長くなり、ストーリーの肝がわかりにくくなることも。)
● 物語を語るようにあらすじを書く。(うまくいくと読み手の心を動かせるが、盛りこめない要素が残ってしまうきらいも。)
● あらすじは出来事の列挙にとどめ、登場人物の心情や印象に残る場面などは、所感でとりあげる。(ストーリーよりも、描き方や感情描写などが主になる作品では有効か。)
レジュメ全体のスタイルとしては、シンプルに短く、という人もいれば、表紙写真をカラーで入れ、作品や作者のホームページ、書評サイトなどにリンクを張ったり、海外の書評を訳してつけるという人もいました。冒頭の1、2章の試訳をつけた方も2名。
レジュメは、提出先や作品の特徴がちがうのに、毎回、同じパターンで書きがちですが、本当は作品の特徴や提出先の事情に合わせて書き方を工夫すべきだと改めて思いました。具体的には、小見出しをうまく使っている方がいて、次回はやってみようと思います。編集者さんにとってはわかりやすそうです。
そして、結局、これがベストという書き方はないことを改めて感じました。また、あらすじのまとめ方だけではなく、所感の目のつけどころがちがっていておもしろかった。本を読むという行為は、やはり、きわめて個人的な営みなのですね。
さらに、どういう編集者さんに読んでもらうか、そして、その編集者が求めるものがなんなのか(コンパクトさ? 丁寧にしっかり? 即断即決したい? 編集会議にコピーを使うの?)、対面して話をする場があるのか、もちこみ企画なのか、依頼されたリーディングなのか、毎回異なるはずのこうした条件を考えて書くべきなのでしょう。
それに、リーダーの読む力や文章力も評価されてしまうので注意が必要です。「レジュメで翻訳の力がわかる」とも言われますが、確かに、出席者のそれぞれのレジュメは、いつもの課題訳文と文章のタッチが明らかに似ていました。
原文があってもなくても、文章には書いた人の個性が出てしまうのです。おもしろいけど、怖くもあります。
(M.H.)