翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

重版出来!

 えー、自分の訳書の増刷の話ではありません。今、TBSでやってる漫画編集者を主人公にしたドラマの話。このドラマ、ほんとにおもしろいんですよ。来週で終わってしまうのが残念。

 原作は松田奈緒子さんの漫画です。

重版出来! コミック 1-6巻セット (ビッグ コミックス)

 

  なにがおもしろいって、漫画家を翻訳者におきかえると共感するところがすごく多いこと。もちろん、あんなに個性的な編集者さんばっかり相手にしているわけはありませんが、それでも、編集という仕事が編集者の個性の上になりたっているところはとてもよく描かれています。

 漫画家のもちこみのシーンは身につまされますねえ。編集部に電話してアポとって、受付でパスもらって、編集部横の打ち合わせコーナーでネーム(レジュメ)を見てもらって、なんとなくダメだろうなあ、と思いながら出版社の玄関を出て、ビルを振り仰ぐ感じはもう涙ものです。既視感たっぷりです。あっちの出版社、こっちの出版社のことを思い出します。受付なくて、ずんずん中まで入れるところも、じつはけっこうありますけど……。

 漫画家は、有名な先生のアシスタントをしながら腕を磨き、ネームを描いては出版社にもちこみます。翻訳者の場合は、やはり先輩翻訳者に教わりながら、自分で原書を読んで、ジャンルを探って、レジュメを書いてはもちこむわけです。昨日の放送分では新人の漫画家さんの連載が決まる場面がありましたが、編集会議、一度のぞいてみたいものです。売れる本を作らなきゃいけない、でも、漫画家の個性も育てたい、そう思いながら出版不況の中で闘う編集者たちの気持ちがよく描かれています。

 昨日は、連載決定の連絡を受けた新人漫画家が泣き崩れました。あんなにドラマチックではありませんが、「版権とりました。訳してください」というメールをもらった時のうれしさは格別です。

 翻訳者の場合は原作があるわけで、本作りに占める重みは、漫画家にくらべれば、10分の1、いや100分の1、いや、もっと軽いかもしれませんが、やはり作品を世に送り出すという意味では共通しているわけで、毎週、テレビの前でテンションが上がっています。なんだか、元気がわきます。

 

 できれば、時々、「重版出来!」の連絡を受けたいものですが、こればっかりは自分でコントロールできません。漫画家も翻訳者も、本になる前に頑張るしかないんだぞ、と言い聞かせて、さて、今日もしっかり仕事、仕事。

(M.H.)

 

 と思っていたら、ピンポーン! 宅配便が来ました。課題図書に合わせて増刷した分の『ハーレムの闘う本屋』がとどきました。やった! 重版出来(しゅったい、と読むらしい)! 6月になって、書店の店頭にならびはじめています。ぜひ、ぱらぱらと中をのぞいてみてください。なかなかインパクトのあるブックデザインですよ。

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