フィッシュ・アンド・チップス、といえば、言わずと知れた、イギリスの国民的ファーストフードです。埼玉スタジアムのフィッシュ・アンド・チップス、この前はじめて食べたのですが、これがうまい! ギネスも一緒に売ってるし。まあ、スタジアムの中なんで、ちょっとお高いのが難ですが。
たまたま、揚げたてだったせいもあるかもしれませんが、本場イギリスよりうまいんじゃないか、と。
ロバート・ウェストールの短編に、「最後の遠乗り」という、バイク乗りの若者たちを描いた短編があります。語り手の若者は、いつもつるんで走っていた仲間のジェロニモが事故で死んでから、しだいにバイクから遠ざかり、結婚することになって、相手の女の子から、もうバイクには乗らないでくれ、と言われます。
で、最後の部分がこうです。
……月は木々の片側だけを銀色に染め、おれはたしかに走っている。でも、ジェロニモは横にいない。おれはこの先も、少しずつジェロニモから遠ざかっていく。そして、髪にカーラーをつけ、油ぎった熱い包みをかかえてフィッシュ・アンド・チップス屋から出てくるばあさんたちに近づいていくんだ。電気屋のショーウィンドウをのぞきこんでいる中年男たちに……。
ほんとうに、それでいいんだろうか?
『ウェストール短編集 真夜中の電話』(ロバート・ウェストール作、原田勝訳、徳間書店刊、2014年、p.186より)
この短編、大好きです。
夜、月が昇ってまだ低いところにあるころに、バイクで郊外の道を走ると、車のように天井がないので、月が横を一緒に走っているのがよくわかります。なんでもない道でも、これがけっこう、グッと来るんです。
それにしても、イギリスのばあさんたちは、あんな油っこいものをよく食べるんですかねえ。寿命が伸びないはずです。
(M.H.)