翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

「率直と希望 ── いま、YA文学」

「率直と希望」というフレーズが目を引きます。

 

 自立のためにホームレスの販売者の手で売られている『ビッグイシュー』、10月1日号で、「率直と希望 ── いま、YA文学」という特集記事が掲載されています。これが、なかなかの充実ぶり。

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 しばらく買っていなかったのですが、この特集のことを知り、いつもの水道橋の販売員さんから買いました。

  執筆者は、金原瑞人さん、赤木かんこさん、土居安子さん、柏の子どもの本の店「ハックルベリーブックス」の奥山恵さん、そして、「ガリレオ工房」に取材した「理科読のすすめ」という内容です。

 

 金原先生は、今、詩と短歌が来てるぞ、という話がおもしろい。先生、いつも一歩先を行ってる感じ。『BOOKMARK』からも8作品が紹介されています。

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 赤木さんは、「クラシックYA文学」と銘打って、『クリスマス・キャロル』や『赤毛のアン』など10冊を紹介。『エヴァが目ざめるとき』が紹介されているのがうれしい。

 土居安子さんは、「YA文学のニューウェイブ」と題して、社会や歴史とリンクした作品を紹介。『月にハミング』や『火打箱』にまじって、拙訳『ハーレムの闘う本屋』も紹介していただきました。ありがとうございます。

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 何度かお店でお世話になっている奥山さんは、おすすめ「日本のYA文学」の紹介です。那須田淳さんの『ペーターという名のオオカミ』、未読ですが気になるので注文しました。なにせ今翻訳中の作品も、オオカミを森に帰す話なので。

「ガリレオ工房」の取材記事では、科学ものが紹介されています。

 

 「率直と希望」という言葉がいい。これは『ビッグイシュー』の編集者さんが書いたのでしょうか。YA文学の特徴をよくとらえています。

 社会の激変にさらされる若者たちに向けて書かれたYA文学。自分自身、家族、友達、恋、冒険、仕事、社会、戦争、歴史、未来、異世界、自然科学など、その広く深い世界。生きる原点を探るテーマと物語は、時に大人も救われるような率直と希望がある。
  (『ビッグイシュー日本版』vol.296、p.07より)

 自分がYA文学の翻訳に携わっているわけを、うまく代弁してもらったように思いました。

 

『ビッグイシュー』はA4版ですが、執筆者ごとに見開きカラーで2ページずつ、特集表紙ページと合わせて計11ページ。すごく読みでがあります。ブックガイドとしても、本が多すぎないのでおすすめ。

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 毎月1日、15日発売ですが、販売者さんは、たいていバックナンバーも何冊か前まで一緒に売ってますから、しばらくは入手可能と思います。350円。180円が販売者の方の収入になります。

 販売場所は以下のリンクから。

www.bigissue.jp

 

(M.H.)