翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

世界の翻訳者仲間(3)── スペインから四人?

 引き続き、IBBYの2016年度オナーリスト、翻訳者部門からの紹介です。

 驚いたのは、スペインから四人が選ばれていること。なぜか?

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  じつはそれぞれ、バスク語、カタルーニャ語、ガリシア語、そしてスペイン語の翻訳者なのです。びっくり! 考えてみれば、昨日紹介したアルメニア語だって、ソ連の一共和国だった時も、独立国になってからも、そして世界中にちらばっているアルメニア人にとっても、世界にひとつの独立した言語なのですから、スペインというひとつの国で、四つの言語の翻訳者が推薦されたっておかしくはない。

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 バスク語の Miren Arratibel さんは、1969年生まれの女性翻訳者。アンデルセン童話や、ウェルズの『透明人間』、パトリック・ジュースキンドの『香水』などを翻訳しています。受賞対象作は、ケネス・グレアムの『楽しい川べ』です。 バスク語といえば、今年の第2回翻訳大賞を受賞したのは、バスク語から日本語へ、『ムシェ 小さな英雄の物語』(キルメン・ウリベ作)を翻訳された金子奈美さんでしたね。

 おとなりのカタルーニャ語の受賞者、Caroline de Jong さんと、Gustau Raluy さんは、オランダ語からカタルーニャ語に共同で翻訳をしているお二人。どういう分担なんでしょう。一人がオランダ語の読解、もう一人がカタルーニャ語の仕上げなんでしょうか。

 

 そして、もうお二人。

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 ガリシア語、というのは知りませんでしたが、Ramon Nicolas さんは、ポルトガル語からの翻訳作品が対象作になっています。

 そして、スペイン四人目の受賞者が、スペイン語の Diego de los Santos さん。1974年生まれの男性です。かなり広いジャンルにわたって、英語圏からの翻訳を行なってきたようです。受賞作は、このおなじみの表紙、去年から今年にかけて、日本でも広く読まれた『ワンダー Wonder』(R・J・パラシオ作)です。この表紙、翻訳されても変えない国が多いみたい。

 

 言葉ってほんとうに不思議なものです。そして、こうしてさまざまな言語の翻訳者を紹介しているだけで、なんだか元気がわいてくるから不思議です。

(M.H.)