翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

共謀罪成立について

 ほんとうにやるせない気分です。どうしてこんな法案が通ってしまうのでしょうか? 戦後、日本は経済大国となった陰で、じつは地に足をつけた民主主義が成立していなかったことが、成長神話に翳りが出てきたところで露呈した感じがします。

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(ムラサキシキブの花。奥ゆかしさを見習いたい。)

 

 前回、イラクの記事を書きましたが、私が滞在していた頃は、サダム・フセインとバース党による独裁政治下でした。職場の各部屋にはフセインの肖像写真が掲げられていて、イラク人の従業員は、写真にむかって下手なことをすると不敬罪で訴えられると言っていました。道路で写真を撮っていただけで捕まってしまった日本人もいました。なので、カメラはもっていましたが、外での写真撮影はご法度でした。まさかそんな社会にはならないと思いますが、ほんとうに残念です。

 

 以下に、日本ペンクラブの抗議声明をコピーします。

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 国内外の専門家、表現者、市民から、多くの意見が表明されるなか、国会において十分な審議が尽くされないばかりか、多くの疑問をのこしたまま、思想・表現の自由に重大な悪影響を及ぼすいわゆる「共謀罪」が強行的に採決されたことを深く憂えるとともに、強い怒りを禁じえない。
 今回の衆参両院における法案審議と採決にいたる過程は、民主主義のルールを無視し国民を愚弄したものであり、将来に大きな禍根をのこす暴挙である。
 われわれは法案審議のやり直しを強く求める。

2017年6月15日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎

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 まさか、そんな社会にはならない、と、たぶん歴史上、どの国の国民も思っていたはずですが、そのうちに、自由にものが言えなくなった国はたくさんあるのだと思います。

 

 言葉を使って仕事をする人間のはしくれとして、また、若い人たちにものを教えている人間として、強くこの法律の成立に反対します。

 

 ただ、法律はできたら終わりではなく、運用を監視することもできますし、また、選挙によって政権を選び、再改正することだってできます。未来を信じたい。

 

(M.H.)