連投です。今日、6月24日(土)の読売新聞夕刊のKODOMOサタデーの書評欄「空色ブックガイド」に、わたしの記事を載せていただきました。なかがわちひろさんと月代わりで3回目(わたしは2回目)のコーナーです。よろしかったら、読んでみてください。丹地陽子さんのイラストも、またすばらしいです。
今回は「冒険」をテーマに、『シャクルトンの大漂流』(ウィリアム・グリル作、千葉茂樹訳、岩波書店)と、『青春を山に賭けて』(植村直己作、文春文庫)の2冊を紹介しました。
(この布張りの背と、盛り上がって光る表紙の印刷がいいんです。所有欲をかきたてます。)
『青春を山に賭けて』は、若いころに読んで、とても勇気をもらった本です。人間、世界中どこに行っても、なんとかなる、と思いました。
『シャクルトン』いい本です。南極探検をしたシャクルトンのノンフィクション絵本。作者はまだ25、6歳だったと思うのですが、ウィリアム・グリルというイギリス人の青年です。この作品で、史上最年少でケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。色鉛筆で描かれた独特の絵で、小さなコマ割りで描かれたかと思うと、ページをめくると見開きいっぱいの流氷原の絵が出てきたりします。どこか懐かしいタッチで、歴史的な事実を絵と文で語る、独特のジャンルを開拓しました。
訳者の千葉さんとお会いした時、翻訳にあたって、スペースの制約でできなかったことがあって残念だ、とおっしゃってましたっけ。なにかは内緒です。編集のSさん(拙訳『ペーパーボーイ』の担当編集者さんです)は、「ちょっと、『ちいさいおうち』の、バージニア・リー・バートンのタッチに似てるでしょう」とおっしゃってますが、たしかに。ああ、『ちいさいおうち』、子どものころ、何度読んだことか! 大好きでした。
(ほら、光るでしょう!)
グリルは、識字障害があって、文字の多い本を読むのに苦労していたそうです。美術の道に進んだ彼が、こうした本を作ることになったのも、なんか、いい話だなあ、と思います。
彼の次回作は "The Wolves of Currumpaw"。カランポーのオオカミたち、です。シャクルトンと同様の手法で、オオカミ王ロボとシートンの交流を描いた作品です。これはまだ原書しか出ていないので、とりよせて読んでみました。南極の青と白から、一転、アメリカはニューメキシコの赤茶けた土の色です。この変化が、またナイス。これも岩波からもうじき出るそうです。あ、原作を見ると、絵もそうですけど、テキストの活字がいいんですよ。手動タイプライターの感じといえばいいのかな。なんか懐かしい感じです。
ニューメキシコ、西部劇、のイメージ。
やっぱり光ってる。
こういう本は作るのにお金もかかって、技術的にも大変だと思うのですが、作り手の心意気が伝わってきて、買わずにはいられないのでした。
(M.H.)