翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『オオカミを森へ』読書会

 土曜日、12月8日は、神保町のブックハウスカフェで、拙訳『オオカミを森へ』の読書会がありました。洋書の森「おしゃべりサロン」主催のイベントで、わたしもお招きいただき、20名ほどの方からいろいろな感想が聞けて、とても楽しかったです。参加してくださった方、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

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(暖かかった東京ですが、神田界隈の銀杏がようやく鮮やかな黄色に色づき、散っているところでした。)

 読書会などで自分の翻訳した本の感想をうかがうと、いや、みなさん、ほんとうに色々なところに気をつけて読んでいらっしゃるんだな、と思います。訳者は、原作の意図をできるだけ汲んで訳しているわけですが、じつは原作者の本当の気持ちなんてよくわからないし、まして、読む人によって目のつけどころや、感じるポイントが異なるわけですから、ある意味、訳者としては、最後は「好きにしてくれ」という感じになります。

 情景が浮かばない、とか、読みづらい、とか、そういう感想は、翻訳のスキル不足の場合があるわけで、ちょっと緊張しますが、「フェオは……」「イリヤは……」「ラーコフ将軍は……」と、登場人物の名前を主語に語ってくださっている限りは、少なくとも、彼らが人物としてなにがしかの印象を残した証拠で、とても楽しく耳を傾けることができます。

『オオカミを森へ』の原作者、キャサリン・ランデルは、すでに、四作、五作と、そこそこ評価の高い作品を発表し続けていますが、まだ30歳をすぎたばかり。プロットの粗さや力づくのところも感じられますが、人物や情景の描写力、ダイナミックな展開、アイデアの豊かさなど、魅力的な若手作家で、今後が楽しみです。

 また、当日の感想の中では、ターゲットとしている年齢層(小学校高学年〜中学生くらいでしょうか)の読者が読んだ場合は、またちがうんじゃないか、というようなことをおっしゃった方がいらっしゃいました。わたしもそう思います。若い読者がドキドキしながら楽しく読んで、でも、あとに勇気とか思いやりとか決断力とか、そういうことをちょっぴり考えたり、感じたりしてくれるといいなあ、と思います。

 

 冬にぴったりの作品です。ぜひ、クリスマスプレゼントに!

 ロシアが舞台ですが、なぜかフィリピンのイラストレーター、ジェルレヴ・オンビーコさんの美しい挿絵がたくさん。目も楽しませてくれますよ。

オオカミを森へ (Sunnyside Books)

オオカミを森へ (Sunnyside Books)

  • 作者: キャサリンランデル,ジェルレヴオンビーコ,Katherine Rundell,Gelrev Ongbico,原田勝
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 単行本
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 二次会は作品にちなんで、ロシア料理店。こちらでも、楽しいおしゃべりがたくさんできました。ありがとうございました。

 

(M.H.)