JBBY(日本国際児童図書評議会)で作っている、『おすすめ! 世界の子どもの本──JBBY選 日本で翻訳出版された世界の子どもの本──』が届きました。表紙絵はスズキコージさんですね。
選書メンバーの皆さんのコメント付きで、絵本、読み物、ノンフィクションが70冊近く紹介されています。先日、このブログでふれたイーゴリ・オレイニコフさんのインタビュー記事も。希望される場合は、JBBYにお問い合わせください。
読んで、むむ、と思ったのは、宇野和美さんのエッセイ。
その中で、スペイン語がご専門の宇野さんは、ラテンアメリカの児童文学が共感を得難いのは、日本との違いや距離が強調されがちだからだという指摘に対して、結局わからないとしても、どこまでも他者を理解しようとするのをあきらめないのが翻訳者だと思う、と書いていらっしゃいます。それによって、既存の価値観や常識が広がることがあるのだし、わからないことも伝えるのが、わたしたちの仕事なのだ、と。
なぜ、むむ、と思ったかというと、自分はどうしても、外国や異世界を舞台に描かれた海外作品の中に、自分が共感する価値観の象徴やデフォルメが見つかった時に訳したい、と思う傾向が強いと思うからです。
もちろん、世界中どこへ行っても、人間は人間だという普遍性を伝えるのも大切なのですが、ちがうことや、わかりにくいこと、こういう考え方もあるのか、という価値観をゆさぶる作品に対しても尻込みしてはいけないのかもしれません。
先日リーディングした本の中に、日本人にはわかりにくいから、といってお断りした本があって、もしかしたら、そういうことではないのかもしれないと、今、少し思っています。
(「BOOKMARK」もそうですが、ブックリスト的なものが届くたびに、「読んでいない本をつきつけられる刑」を受けているようで、ちょっと心が痛む……。)
(M.H.)