翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

ケイト・グリーナウェイ賞

 15日に発表された今年のケイト・グリーナウェイ賞は、ショーン・タンの "Tales from the Inner City" でした。ショーン・タンはもうずいぶん前から応援していたので、とてもうれしい。来日講演も聴きに行きましたが、柴田さんとのトークが面白かったのをおぼえています。内容はまったくおぼえてないけれど……。オーストラリア人ですが、アジア系で、どうもケイト・グリーナウェイをアジア系の人がとったのは初めてらしいです。

 

 記念にうちにあるタンの本を撮ってみました。

f:id:haradamasaru:20200619125742j:plain

 

 カーネギー賞とあわせて発表は下のサイトにあります。

carnegiegreenaway.org.uk

 

  たぶん、最初にショーン・タンの絵を知ったのは下にリンクをはった、"The Rabbits" 。ジョン・マーズデンの文にタンが絵を描いたものです。うちにあるはずなのですが、見つからない。アマゾンだと、2003年の出版になっています。オーストラリア大陸への侵略というか征服というか、そういう話だったと思います。タンの作品には、移民の視点やオーストラリアの多民族国家という側面が出ているものがあって、そうでなくても、どこかに自分は何者なんだろう、という漠然とした不安のようなものが現れています。それと独特のイラストがからんで、一度見ると忘れられません。

The Rabbits

 

 マーズデンは "Tomorrow When the War Began" というYAシリーズが大好きで、あれはほんとに訳したかった。ポプラ社(東京創元社とまちがえてました。訂正します)からTomorrowシリーズとして出ています。オーストラリアに某国が侵略し、キャンプをしていた若者たちが難を免れ、反撃に出る、という話です。

 そのマーズデンは最近、いじめ必要論みたいな話を言っちゃったもので、オーストラリアでは叩かれていますが、Tomorrowシリーズのどこかマッチョな感じ、自力突破の考え方は、今思うとそういうことなのか、とも思い、複雑です。

 

 今年のケイト・グリーナウェイについてはとくに注目していた理由があるのですが、それはまた明日。

 

(M.H.)