翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

香港情勢を憂う。

 香港の民主派の活動家、アグネス・チョウさんが逮捕されてしまいました。十代で雨傘運動のころから積極的に活動し、民主の女神ともよばれる彼女は、象徴的な役割を担ってきたので、とても心配していたのですが、やはり、という感じ。

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  チベットといい、香港といい、また、南シナ海といい、中国の拡張主義、覇権主義の強まりは本当に残念です。領土を広げ、影響力を強めようとせざるを得ないのは、共産党一党独裁のメカニズムでしょうか。

 やはり共産党時代のソ連や、フセイン独裁のイラクに滞在した経験がありますが、日常生活は、その体制のもとで安定して営まれているように見えますが、仲良くなると打ち明けられる一般の人々の不安や不満には、なんともやりきれないものを感じました。

 写真とれない、政治の話できない、いつどこで通報されるかわからない……。あの感じはなんともいえなかった。日本でも、会社の仕事半分でソ連の人とあちこち歩きまわっていたら、あとで警察の公安の人から、尾行させてもらいました、と言われたこともありますが、ほんと、いやーな感じでした。

 

 日本語が堪能で、日本のメディアでも何度もその主張を語ってきたアグネスさんや、その他の活動家たちの無事を願いますが、正直、見通しは明るくないでしょう。ソ連やユーゴスラビアの体制が崩れて分裂した時のような力は、中国では働かないと思うし……。

 

 日本でも、コロナとともに、さまざまな社会的歪みや硬直性がましているような気がする。民主的なシステムが機能するように、今のうちから、きちんとすべきことはして、言うべきことは言なければならないと、改めて思います。

(M.H.)