何度かご紹介してきた絵本、『セント・キルダの子』の見本が届きました。この本は、原書を見た時から、とにかくどこかで出してほしいと思い、何社かもちこんだあとに、岩波書店さんから出してもらえることになった本です。とてもうれしい。
スコットランドの北西の海上にある、それこそ世界のはての群島、セント・キルダ諸島ですが、きびしい自然の中でも、昔から人々は独特のくらしを守りつづけてきました。しかし、それも終わりを告げ、今は無人島になり、世界遺産としての管理がされています。
その島の最後の住人たちの一人だった少年の目を通して描く島の自然と暮らしは、大袈裟にいえば、自分たち人間は、この地球という星に暮らしているのだということを思い出させてくれます。
いろいろ能書きはあるのですが、とにかく美しい本です。ウォーターズさんのモノプリントという技法で作られた版画は、構図が大胆で、細部のゆるさが素朴。色使いも独特で、一度見ると忘れられません。手元においておきたくなる絵本。
島の立地や自然、人々のくらしぶり、文明との軋轢、島民たちが離島にいたる経緯、少年のその後が、絵と簡潔な文章で描かれています。
巻末には、取材のために島を訪れた作者、ベス・ウォーターズさんの取材スケッチがあり、今の島の様子を伝えてくれます。このスケッチが、また版画とはちがっていい。
下のリンクは、この本の紹介が掲載されている、岩波書店児童書編集部の冊子「やかましネットワーク」60号。ウェブ上でも読めます!
どうぞよろしく!
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(M.H.)