「子どもの本棚」10月号の、複眼書評のコーナーで、拙訳『兄の名は、ジェシカ』をとりあげていただきました。坂内夏子さんと白瀬浩司さんの書評が、上下二段でならべてあります。おもしろい構成の書評欄です。ふつうは、どなたか一人の書評が載るものですが、視点や文章のちがいを比べて読むことができます。ご紹介ありがとうございます。
とくに印象に残ったのは、白瀬さんの書評中の「重いテーマを扱いつつも、ぐいぐいと惹きつける軽妙な筆致と、少しずつ積み重ねられていく絶望的な末路への予感、それを裏切るどんでん返しの結末を、読者は驚き、楽しめばよい」というところ。もちろん、それだけではないことが前後で書かれているのですが、そう、読者にはまずそうして楽しんでもらって、考えるのはそのあとでいいんじゃないかと思います。
今号は、ほかに翻訳作品として、さくまゆみこさん訳の絵本『みずをくむプリンセス』(スーザン・ヴァーデ文、ピーター・H・レイノルズ絵、さ・え・ら書房)が、今月の書評1で、新刊紹介では、同じくさくまさんの訳で『グレタとよくばりきょじん』、野坂悦子さん訳の『おいで、アラスカ!』、酒寄進一さん訳の『ベルリン 1919』、渡辺広佐さん訳の『ぼくたちがギュンターを殺そうとした日』が紹介されています。
あ、あと、杉田七重さん訳の『ぼくの帰る場所』(S・E・デュラント作、鈴木出版)が、第4回日本子どもの本研究会作品賞を受賞されたので、杉田さんの受賞のことばが載っています。杉田さんの「読者からうれしい感想がとどけば、額にでも入れて家の一番目立つ場所にかざりたくなるし、評判にならなければ不憫に思い、「おまえのよさがわからないなんて、世の読書人の目はふしあなよ!」と、かばいたくもなる。」という一文に、大きくうなずきました。
日本子どもの本研究会のみなさん、書評掲載、見本、ありがとうございました。
(M.H.)