翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

古典児童書を読む会『ゲド戦記1 影との戦い』

 月曜は、コロナでずっと行けていなかった読書会が、川越の絵本カフェ、イングリッシュブルーベルさんであり、行ってきました。今回の課題本は『ゲド戦記1 影との戦い』。ル・グウィンの傑作とされていますが、なかなかむずかしい。岩波少年文庫には「中学生から」となっていますが、一回読んだだけではわからないところも多々あります。

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 出席者は、うーん、よくわからない、いまいち、という人と、すばらしいと熱烈に支持する人がいて、名作とされていながら、これだけ意見が割れるとは、と、ちょっと驚きました。わたしも、いまいちよくわからないと感じた一人です。ただ、どうやら緻密に計算されているらしい、ということはなんとなく感じられ、こちらの読みの力が問われているような気がします。2巻、3巻と読み進むにつれてわかることもあるらしく……。

 

 翻訳については、wizard が「魔法使い」としか訳せず、訳者の清水さんも困ったそうですが、magician、mage、sorcerer など、いろいろある中で、wizard には「賢人」「賢者」というニュアンスがあるのに、その色が出せないことが悩ましい。また、登場人物が、いわゆる「役割語」でしゃべっているのですが、若い主人公ゲドには、もう少し、一貫して若者らしさを出すような言葉遣いをさせてもよかったんじゃないか、と思いました。まあ、魔法使いの立場でものを言う時もあるので、むずかしいのですが。

 カラスノエンドウと、その妹のノコギリソウは、みなさん、好感をもっているようでした。ゲドを少し親しみやすい、読者と同じ高さの存在にしてくれる脇役たちだからかもしれません。登場人物には、こうした植物や鉱物の名前がつけれられていて、それを日本名に訳しているのも、原書との語感がちがって感じられる原因かもしれません。

 

 この先読めるかなあ。うーん……。

 

 あ、今日は寒かったので、バイクはやめて、電車に乗ったら寝てしまい、川越を通りこしてしまった……。メンバーの皆さんと久しぶりに会えてよかった。

 

(M.H.)