翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『熱風』ウェストール特集

 ジブリの雑誌、『熱風』2026年2月号にロバート・ウェストール特集が載っています。以前、ウェストールの短編集のカバー画を宮崎駿さんに描いていただいたこともあり、ジブリから送られてきました。宮崎さんはウェストールの大ファン(といっていいのか)です。

 なんと言っても、昨年まで徳間書店にいらっしゃった編集者の上村令さんの記事がすごい。20ページ以上あるのですが、ウェストールと直接やりとりし、信頼されていた上村さんの詳細な記録は、ウェストールファン必読です。

 上村さんのお話だと、依頼された量の3倍くらい書いてしまい、カットしてもいい箇所を指定しておいたら、すべて載せてくれたそうです。そりゃそうだろ。カットできる部分なんてない。

 

 自分は翻訳学校の金原クラスでウェストールを知り(たぶん、「チャス・マッギルの幽霊」がテキストだったような……)、福武書店、徳間書店とリーディングをする中で、編集部の机の上にあった『弟の戦争』の原書 "GULF" を奪うようにしてもちかえり、読んで衝撃を受け、それが徳間書店での最初に仕事になった。もう30年も前のこと。

『弟の戦争』は、ゲラにする前の原稿でかなり上村さんとやりとりしてからゲラになったので、もう、直しなんてないさ、とたかをくくっていたら、またびっしり鉛筆が入っていて、打ち合わせしないでそれをもちかえったことをおぼえている。わたしを育ててくれた恩人でもあります。

『弟の戦争』は自分がイラクに一年滞在していたこともあり、ほんとうに思い入れの深い訳書になったが、同時に、その後の訳書のラインナップを決めてくれた作品。土曜日のクレヨンハウスでの講演の準備をしていて、少し読み返したが、ウェストールは主人公の言葉を通してではあるが、はっきりと、強烈に、アメリカ軍のイラク侵攻を批判している。湾岸戦争直後のことで、メッセージは明快。そして、彼の共感力というのか、人間の感情を描く力はすばらしいとあらためて思った。

 

 下の書影は野沢佳織さんと分担して翻訳した短編集。野沢さんはウェストールの短編をすべて読んでました。それもすごい。

 未読の方はぜひ! 個人的には、オートバイ乗りの心境を描いた「最後の遠乗り」(『真夜中の電話』所収)がいち押しです。

 

(M.H.)