翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

清水眞砂子さんのコラム

  清水眞砂子さんが、拙訳『ハーレムの闘う本屋』の書評を、教職員のための月刊誌『クレスコ』の9月号に書いてくださいました。

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 この本の素晴らしさを熱い言葉で語ってくださっていて、感激しました。一部を以下に引用させていただきます。

 根なし草にならないために

 すてきな本に出会うことって、すてきな人を訪ねていくのと同じだなあ、と私は今、静かな興奮の中にいます。この4カ月余り、私は脇に置いた本にちらちらと目をやりながら、ドアをノックする時をうかがっていました。やっとこちらの体勢が整い、私はドアをたたきました。それがこの『ハーレムの闘う本屋──ルイス・ミショーの生涯』です。

   『クレスコ no.174』(p.13、子どもの本のもつちから 第57回より抜粋)

  こんな風にしてこの本を読み始めてくださったことが、訳者としてうれしくてたまりません。

 

 清水さんは、本書の内容を紹介されたあとに、こう結んでいます。

 ……本も「質」を問わずすべて消費の対象としか考えずに、日本版「ミショーの店」を自らの手で次々とつぶして今日に至っています。

 私たちは、精神の自立に不可欠な言葉の獲得を、どうやって若者たちにうながしているのでしょう。本には全く縁のなかった10代の少年にラングストン・ヒューズの詩集を紹介するルイスの姿に、私は、まだやれることはあるはず、と思い始めています。

   (同上より抜粋)

 身の引き締まる言葉です。

 

 若い人にむけた本を翻訳している者として、改めて、自分のしていることの意義を確認し、さらに、もう少しできることがあるのではないか、とも思いました。

 清水さん、ありがとうございました。

(M.H.)

 

クレスコ no.174―現場から教育を問う 安倍「教育再生」と子どもたちの未来

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