翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第51回 原音主義

★欧米の人は、名前や地名の読み方にさほどこだわりがないようで、作者から「好きに読んでくれ」なんていう返事が帰ってくることもしばしば。日本人がこれほど名前の発音にこだわるのも、日本語のカタカナが表音文字だから。文字にしてしまうと読み方が一通りに定まってしまいます。アルファベットは、ある程度音は表わすものの、読み方が一つではないので、便利といえば便利、不便といえば不便です。(2017年09月09日「再」再録)★

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 固有名詞の表記はほんとうに悩ましい問題です。

 今、翻訳中の小説は、山の話だということは、以前も触れましたが、まずは「エヴェレスト」か「エベレスト」か、で悩みます。「エベレスト」のほうが日本人にはなじみがありますよね。さて、どうしたものか。いやいや、チベット語なら「チョモランマ」、ネパール語なら「サガルマータ」でしょ。

 

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『オオカミを森へ』予約はじまりました!

『オオカミを森へ』、アマゾンで予約できるようになりました。

オオカミを森へ

オオカミを森へ

  • 作者: キャサリン・ランデル,ジェルレヴ・オンビーコ,原田勝
  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 どうぞよろしく!!

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古典児童書を読む会『若草物語』

 月曜日は川越の絵本カフェ「イングリッシュブルーベル」さんで、古典児童書を読む会がありました。課題本は『若草物語』。

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 写真は福音館版の表紙(イラストはターシャ・テューダー)と、作中にも登場するブラマンジェ。おいしかった。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第47回 「役割語」という考え方

★「役割語」、とても大切な考え方です。一方で、あえて役割語を使わないことも、作品の質を高めるのにとても大切だとわかります。いやあ、言葉はおもしろい。(2017年09月05日「再」再録)★

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 翻訳、とくに物語中のせりふの翻訳に関しては、この「役割語」という考え方は大変有用です。ステレオタイプと思われるかもしれませんが、ある意味、言語というのはステレオタイプであるがゆえに、意志の疎通が図れるのです。

 ただ、金水さんのこの著書は、そのステレオタイプを破るタイミングや意味を解説してくれているのがすぐれたところでしょう。主人公には「役割語」を使うな、という主張には、なるほど、と膝を打ちたくなります。ん? これ、ステレオタイプの表現か? いやいや……。

ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)

ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)

 

 

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第46回 作家の精神

★この後、訳書の原作者としては、『エベレスト・ファイル』の原作者、マット・ディキンソンさんにお会いすることができました。こうして作家の話を聞くと、ああ、やっぱり自分は作家にはなれないなあ、と思うのです。(2017年09月04日「再」再録)★

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 外国の作家さんの講演会は、そう頻繁にあるわけではありませんが、聴きにいくとなかなかおもしろく、刺激を受けます。今まで行ったのは、ダニエル・キース、ジェフリー・アーチャー、ショーン・タン、そして、この時のデイヴィッド・アーモンド。自分の訳書の原作者としては、ウォルター・ワンゲリン・ジュニア、エイダン・チェンバーズ各氏の講演も聴くことができました。

 

 "Skellig" は、アーモンドさんの児童文学作家としてのデビュー作ですが、いきなりカーネギー賞を受賞しました。

  これは、我が家にある原書です。印象的なカバー絵ですね。写真に撮ろうと思って引っ張りだしてみたら、中にこの本を貸していた編集者さんからの返却時のメモが入っていました。うーん、なつかしい。

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『オオカミを森へ』

 今月発売予定の拙訳『オオカミを森へ』(キャサリン・ランデル作、ジェルレヴ・オンビーコ絵、小峰書店)のカバー写真をいただきました。何度見てもいい表紙。

 もうすぐ発売です。

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 この本の装幀は城所潤さん・大谷浩介さん(JUN KIDOKORO DESIGN)。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第43回 束見本(つかみほん)

★この回では装幀のことをとりあげています。ブックデザインですね。判型、表紙、カバー、イラスト、紙、フォント、挿絵、レイアウト……。装幀によって、本はたぶんまったくちがった「もの」になります。今、訳している本は、なんと活字が緑色! 日本語版はどうなるのかなぁ……。(2017年09月02日「再」再録)★

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 物としての本に、大きな魅力を感じます。装幀は気になりますねえ。生まれ変わったら装幀家になりたい。

 奇しくも、この回でとりあげた二冊の訳書、『大地のランナー』と『フェリックスとゼルダ』は、それぞれ、読書感想画と読書感想文の課題図書になり、多くの中学生に読んでもらうことができました。課題図書の選定にあたっては、間接的に装幀の魅力も関与したのではないかと想像します。

 いずれも、文学としての完成度が高い作品だと思います。感想文や絵は書かなくて結構ですから(笑)、ぜひ、読んでみてください。

大地のランナー―自由へのマラソン (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

大地のランナー―自由へのマラソン (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 

 

フェリックスとゼルダ

フェリックスとゼルダ

  • 作者: モーリスグライツマン,Morris Gleitzman,原田勝
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 2012/07
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フェリックスとゼルダ その後

フェリックスとゼルダ その後

  • 作者: モーリスグライツマン,Morris Gleitzman,原田勝
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第42回 文法の力

★文法は、意味を正確に把握するための助け船みたいなもの。大学受験の参考書にはイディオムや構文の説明も載っているし、ホントに為になります。見たくない、という気持ちはわかるけど、ぜひ!(2017年09月01日「再」再録)★

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  文法書では、これをよく参照しています。

ロイヤル英文法―徹底例解

ロイヤル英文法―徹底例解

 

  今も現役、江川の英文法解説。 

英文法解説

英文法解説

 

  最近では、インターネットのQ&Aサイトもよく見ます。玉石混交ですが、なるほど、と思う解説や、ネイティヴの使用感覚などがわかることも。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第39回 "Little Princess"

★『小公女』大好きでした。この回でふれた古典児童書を読む会は今も続いていて、次回の課題本は『若草物語』です。4人の中では、ジョーが一番好きでした。『若草物語』もいろいろな訳者が訳していて、その違いも楽しむことができます。ただ、今の子どもたちが手にとってくれているのかどうか……。(2017年08月31日「再」再録)★

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『小公女』の話です。写真は左から川端康成・野上彰訳、原作、そして、高楼方子訳。

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 この文で書いたように、訳者が物語を「語る」ように訳すことは、今はなかなかむずかしいのですが、意識だけでも、そういうつもりで翻訳にとりくみたいものです。

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