翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

古典児童書を読む会『若草物語』

 月曜日は川越の絵本カフェ「イングリッシュブルーベル」さんで、古典児童書を読む会がありました。課題本は『若草物語』。

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 写真は福音館版の表紙(イラストはターシャ・テューダー)と、作中にも登場するブラマンジェ。おいしかった。

『若草物語』は小学生のころに家で買っていた世界名作全集の中に入っていて、抄訳と思われるものを読んでいました。大好きでした。もちろん、お気に入りはジョー。

 いくつか翻訳がある中で、今回は福音館の矢川澄子さん訳を読んでいきました。いや、正確には時間がなくて、三分の一くらいしか読めませんでしたが、それでも、個性ある四姉妹の行動やせりふが楽しめ、昔読んだ時の気持ちが蘇りました。

 矢川訳は、ちょっと古い感じもしますが、とにかくリズム感がよく、大げさな言葉づかいや、少し昔の表現が、なんだか講談を聞いているようです。そしてそうした特徴が、南北戦争中のアメリカという時代性や、お金もちではなくても、知的レベルの高い人たちの暮らしをうまく表わしているような気がしました。

 古典新訳がいろいろ出ている中、今の若い人たちを読者に想定して言葉を選んだ時、こういう時代感や描かれた社会の階層などが果たしてうまく表現できるのだろうか、と思います。少し古めかしい言葉や、ですます調、芝居掛かったセリフまわしなども、そういうツールとして捨て難い、と感じたしだい。

 極端にいえば、たとえば江戸時代の話を、若者たちが登場人物だからと言って、現代風の軽いノリにしていいのか、という問題です。うまくいけばおもしろいけれど、失敗すると、とんでもないものになりそうです。古典新訳は、そういう危険性をはらんでいるのかもしれません。

 

 今回は準備不足で少し残念でした。次回はちゃんと読んでいくぞ。

 

(M.H.)