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翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

装幀家 ── 言葉を視覚化する仕事

 先週、装幀家の鳥井和昌さんとお会いして、おしゃべりしてきました。フェイスブックがきっかけで、わたしの訳書の装幀を、実質的な第一作目『ミッドナイトブルー』から始まって、何冊か担当してくださっていたことが判明。ぜひ、一度お話をうかがいたくて、ご足労願いました。

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(鳥井さんのお仕事の一部。徳間書店の児童書を多く手がけていらっしゃるので、知らないうちにお世話になっていました。)

 

 ゲラの時点でテキストを読み、そこから、どう書物という物理的なものに具体化していくのか興味があったのですが、どうもうまく秘密(?)を聞き出せませんでした。なにをどう聞いていいのかわかっていなかったのが敗因(笑)。

 それに、なんでも言葉にしたがる翻訳者とちがって、ビジュアルのお仕事をしている鳥井さんは、ちょっとそのあたりが違うようで、たとえば、こんなことをおっしゃっていました。曰く、

 

「人前で思いを言葉にすると、本当に思っていることとどこかちがうような気がして落ち着かない」

 言葉で説明しようとするとうまく説明しきれなくて、本当のところとずれるのが気持ち悪いのだそうです。うーん、わたしは逆で、それもわからなくはないけれど、言葉にすると、ああ、そういうことか、とわかることが多いのですが。

 

 また、ゲラを読んで、それを表紙などの視覚イメージに転換する時、わたしの想像では、暖色・寒色、ゴチック・明朝、みたいに、選択するポイントがあって、それをつぶして決めていくんじゃないかと思って尋ねてみたら、鳥井さん曰く、

「なんとなく、イメージで」

 え? そうなの? もちろん、膨大な量の視覚的な情報のストックが頭の中にあるのでしょうから、そんなに、あれとこれで決まり、みたいなことにはならないのでしょうが、ポイントがあるのだと思っていたら、どうもそうでもないみたいで……。

 

 表紙の絵をだれに描いてもらうかも、ゲラを読みながら、なんとなく浮かんでくるそうです。途中で、もう絶対にあの人以外にない、という時もあるとか。

 

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 (落語家の写真集や、西村寿行シリーズも。)

 

 舞台関係のポスターやパンフレットなどのお仕事から、書籍のデザインに広がったそうですが、児童書が多いのは、ご自身、お好きだからだそうで、それも20歳を過ぎてから一時期、たくさん読み込んだのだそうです。

 酒井駒子さんや、まつおたいこさんは、活躍しはじめたころからご存知だそうで、まだまだ面白い話が聞けそう。

 短い時間ではとても足りず、またお話を聞かせてほしいと思いました。今度は装幀の知識を仕込んでから質問しよう。そして鳥井さんの装幀した本をもっていって聞いてみよう。鳥井さん、よろしくお願いします。テキストからどうやってビジュアルを立ち上げるのか、もう少し謎解きがしたい。

 

ミッドナイトブルー

(鳥井さんの装幀です。1993年、ほるぷ出版。お互いに30代。この時から20年以上経って、ようやくお会いできました。)

 

 それにしても、急に呼びだして同席してもらったS社の編集者Hさん、あなたはどれだけ本を読んでるんだ。鳥井さんのお仕事ファイルを見ながら、「これ、読んだ!」「これ、持ってる!」って、何度も叫んだのにはびっくりしたぞ。

(M.H.)