翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

真夜中に鳥が死ぬ……

 訳稿を見直していたら、ロシアの厳しい寒さの描写で、「真夜中に鳥が死ぬ。」という一文があった。ふむふむ、零下30度にもなれば、鳥も大変だろうなあ、と思いながら、原文を見ると……。

 Birds die in midflight.

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 ん?

 Birds die "at midnight". じゃないぞ。

 "in midflight" だ! 

 飛んでる最中に寒さで死んじゃうんだ!!

 あぶない、あぶない。よく見ないと。

 

 というわけで、大きな声では言えませんが、やはり300ページも訳すと、訳しもれや誤訳を完全には防ぎきれません。が、なんとかこれを少なくするために、単純に原文との定量的な突き合わせをするプロセスを入れることにしました。

 いや、もちろん、今までも突き合わせはやっているのですが、どうしても、突き合わせているうちに、ああでもない、こうでもないと、訳文をいじくりまわしてしまい、視線が原書・パソコン画面上の訳文・辞書・かな漢字のチェックリスト……と、あちこち行き来し、思考もあちこち飛んで、ちゃんと突き合わせができていないことがあるのでした。

 そこで、いわば「定量的」に、すなわち、とにかく訳しもれがないかだけを、原文と訳稿のプリントアウトをならべてやることにしました。まあ、どの段階で、どれだけの分量を見直すかは効率を考えないといけませんが、訳しもれだけでなく、上の例以外にも、thousand と hundred の訳しちがいとか、いくつかそういう思い込み的なミスや、セリフのあとに一文だけくっついていた地の文の訳しもれとか、そういうものが見つかりました。だれかにチェックを頼んだほうがいいのかもしれませんが、やはり、自分の翻訳作業として、ミスを最小限にできるように工夫していきたいものです。

 

「寒さで、鳥が飛んでいる最中に死ぬことがある。」

 

 でも、この文読んだら、誤訳だと思われないかなあ……。

 

(M.H.)