翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第43回 束見本(つかみほん)

★この回では装幀のことをとりあげています。ブックデザインですね。判型、表紙、カバー、イラスト、紙、フォント、挿絵、レイアウト……。装幀によって、本はたぶんまったくちがった「もの」になります。今、訳している本は、なんと活字が緑色! 日本語版はどうなるのかなぁ……。(2017年09月02日「再」再録)★

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 物としての本に、大きな魅力を感じます。装幀は気になりますねえ。生まれ変わったら装幀家になりたい。

 奇しくも、この回でとりあげた二冊の訳書、『大地のランナー』と『フェリックスとゼルダ』は、それぞれ、読書感想画と読書感想文の課題図書になり、多くの中学生に読んでもらうことができました。課題図書の選定にあたっては、間接的に装幀の魅力も関与したのではないかと想像します。

 いずれも、文学としての完成度が高い作品だと思います。感想文や絵は書かなくて結構ですから(笑)、ぜひ、読んでみてください。

大地のランナー―自由へのマラソン (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

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フェリックスとゼルダ

フェリックスとゼルダ

  • 作者: モーリスグライツマン,Morris Gleitzman,原田勝
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 2012/07
  • メディア: ハードカバー
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フェリックスとゼルダ その後

フェリックスとゼルダ その後

  • 作者: モーリスグライツマン,Morris Gleitzman,原田勝
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 2013/08/05
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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第42回 文法の力

★文法は、意味を正確に把握するための助け船みたいなもの。大学受験の参考書にはイディオムや構文の説明も載っているし、ホントに為になります。見たくない、という気持ちはわかるけど、ぜひ!(2017年09月01日「再」再録)★

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  文法書では、これをよく参照しています。

ロイヤル英文法―徹底例解

ロイヤル英文法―徹底例解

 

  今も現役、江川の英文法解説。 

英文法解説

英文法解説

 

  最近では、インターネットのQ&Aサイトもよく見ます。玉石混交ですが、なるほど、と思う解説や、ネイティヴの使用感覚などがわかることも。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第39回 "Little Princess"

★『小公女』大好きでした。この回でふれた古典児童書を読む会は今も続いていて、次回の課題本は『若草物語』です。4人の中では、ジョーが一番好きでした。『若草物語』もいろいろな訳者が訳していて、その違いも楽しむことができます。ただ、今の子どもたちが手にとってくれているのかどうか……。(2017年08月31日「再」再録)★

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『小公女』の話です。写真は左から川端康成・野上彰訳、原作、そして、高楼方子訳。

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 この文で書いたように、訳者が物語を「語る」ように訳すことは、今はなかなかむずかしいのですが、意識だけでも、そういうつもりで翻訳にとりくみたいものです。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第38回 歴史的現在 (その2)

★この回では、日本語の語尾のいわゆる過去形・現在形に、読者や視点人物と、描写対象とのさまざまな距離感を調節する役割があることを説明しています。意識せずにこうした操作をしていることがほとんどですが、言われてみるとおもしろい現象です。(2017年08月29日「再」再録)★

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 この回に引用した『王国の鍵7 復活の日曜日』は、シリーズ全7巻の最終巻です。左側に見えるのが、原書 "Lord Sunday"。作者ガース・ニクスの丁寧な作り込みが楽しめるファンタジーシリーズです。

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  では、「歴史的現在(その2)」をどうぞ。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第37回 歴史的現在 (その1)

★結局、この回で言いたいことは、文末の処理の話。リズム感やスピード感の操作、あるいは人物の性別、年齢、あるいは性格の表現まで、文末は多岐にわたる役割を負っています。(2017年08月27日「再」再録)★

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 加藤周一著、『日本文化における時間と空間』です。

日本文化における時間と空間

日本文化における時間と空間

 

  こんなむつかしい本はふだん読まないのですが、なにかのきっかけで、ふだん翻訳の時に感覚でやっている文末の処理が、論理的に解説されている部分を見つけました。ぼんやりとつかんでいたものが、はっきりと言語化されていて感動したのと同時に、感覚で処理していたものに説明がつくという、この母国語という言語の不思議も知りました。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第36回 翻訳は芸術か? (その4)

★文芸翻訳はやはり「表現」活動だと思います。「作業」だと思ったらおしまい。能動的な芸術活動だと考えた方がいい。(2017年08月27日「再」再録)★

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 大それたお題で、よくもこんなに長々と書いたものだと思いますが、この四回に書いたことは、自分で納得するために書いたようなものです。まあ、そういう言い方をすると、このコラムは、結局、自分のために書いていたようにも思いますが。

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 梅雨の晴れ間、部屋から見た夕空。

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第35回 翻訳は芸術か? (その3)

★翻訳をする時、あるいは翻訳学習において、あるべきひとつの正解にむかって日本語を考えるのではなく、自分なりに表現しようとすることが大事ではないでしょうか。「模範解答」なんてない、と思ったほうがいい。(2017年08月26日「再」再録)★

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 この回で引用した、『ブック・オブ・ザ・ダンカウ』の表紙。

 装画は、安田みつえさんです。宗教的な寓話とも言える動物ファンタジーである本書の雰囲気をよくとらえてくださっていて、大好きな表紙です。

ブック・オブ・ザ・ダンカウ

 『ブック・オブ・ザ・ダンカウ』(ウォルター・ワンゲリン作、フォレストブックス、2002年)

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コラム「再」再録「原田勝の部屋」 第34回 翻訳は芸術か? (その2)

★文学は、いや文章は、平面上に記された文字という記号の連続で、よほどの速読術の達人でない限り、読者は一文字ずつ、順にたどっていくことしかできません。つまり、絵画や彫刻といった空間を占める芸術とちがって、文学は読者の「読む」という行為によって時間軸上に一本の線となって伸びていく「時間芸術」なのです。もちろん、翻訳された文学もその枠を超えることはできません。(2017年08月25日「再」再録)★

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 この回で引用した本です。作家の北村薫さんが、早稲田で教えた時の講義録を中心に構成されたものですが、読みやすくて、とてもためになり、刺激にもなります。北村さんの作品では、『スキップ』がおもしろかったなあ。

北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)

北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)

 

 

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「空色ブックガイド」

 4月から、読売新聞に「空色ブックガイド」と称して、なかがわちひろさんと交代で、毎月第4土曜日の夕刊にYA文学の紹介文を書かせてもらっています。

 今週土曜日、26日の夕刊はわたしの番。どの本をとりあげたのかは、新聞が出るまであかせないのですが、今日は、これまでにとりあげた本を紹介しておきます。

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