翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

『山は しっている』

『山は しっている』(リビー・ウォルデン作、リチャード ・ジョーンズ絵、横山和江訳、すずき出版)を、訳者の横山さんから送っていただきました。これ、表紙しか見てないことを前回のエントリーで書いたら、送ってもらっちゃいました。横山さん、ありがとうございます。)

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 なんとも魅力的な表紙です。手にとってわかったのですが、なんとなく、もっと写真的な画風だと思っていたのに、ぜんぜん違って、ちょっとかすれたような筆づかいの絵でした。夜明けから朝、昼、日が暮れて、また夜がきて夜明けまでの、山でくらす動物たちが描かれています。

 ジョーンズさんの絵は、写実的なタッチと、デザイン的な処理が絶妙に組み合わされていて、見飽きません。いちばん感心したのが光の描き方。正確に言うと、「弱い光」の描き方。全体に昼間の絵は少なく、薄暗い、あるいは、薄明るい時間帯の絵が多いのに、中間色の組み合わせがとてもきれいで、見づらい感じがいっさいないのです。

 うしろの見返しに、登場する動物たちがずらりとならび、名前が書いてあります。これを見ながら、どこにいたか探すのが楽しい。その数、48種類。ナキウサギが好きかな。月光を浴びて走るオオカミたちもりりしい。

 

 横山さんの訳は、絵をじゃましない、やわらかいけれど甘くない言葉を選んでいると思いました。

 

 子どもはもちろん、大人にもおすすめ。

 

(M.H.)