翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

こちらも、『おばあちゃんの にわ』

 先日、この月曜日、6月19日に刊行された、拙訳『おばあちゃんのにわ』を紹介しましたが、じつは、5月に横山和江さん訳の同タイトル『おばあちゃんの にわ』(ドーン・ケイシー文、ジェシカ・コートニー・ティックル絵、横山和江訳、出版ワークス)という絵本が出版されています。

 出版時期が近かったために、同じタイトルの絵本が出ることを知らないまま、日本語タイトルを決めていました。こういうことがあるんですね。

 横山さんとは連絡をとっていて、どっちも読んでもらえたらいいね、という話をしています。横山さん訳の『おばあちゃんの にわ』は厳密に言うと、「おばあちゃんの」と「にわ」とのあいだに半角スペースがあいてます。そして、原題は "My Nana's Garden" 。Nana はイギリス英語で「おばあちゃん」。イギリスの作品にはよく出てくる言葉なのですが、英文学を読み始めたころは、エミール・ゾラの『ナナ』が頭に浮かんできて、女性の名前だと思って訳してると、あれ、おばあちゃんか、ということがありました。ウェストール作品にも Nana 、よく出てきます。

 原田訳の『おばあちゃんのにわ』の原題は "My Baba's Garden" 。Baba「ババ」というのは、ポーランド語で「おばあちゃん」です。原作者のジョーダン・スコットさんのおばあちゃんはボーランドからカナダへ移りすんだ人で、そのおばあちゃんが絵本の主人公。

 

 表紙を見ただけでもわかりますが、横山さん訳の『おばあちゃんの にわ』のジェシカ・コートニー・ティックルの絵は図案的で、描かれている動植物がきれいに配置されています。対して、シドニー・スミスの絵は、表紙でもわかるように、輪郭線のない、逆光まで筆で再現した対照的な技法です。そして、横山訳はおばあちゃんと孫娘、原田訳はおばあちゃんと孫息子のお話。

 

 あ、そうそう、横山さん訳の『おばあちゃんの にわ』、よく見るとほとんどのページにあるものが描かれています。なにかは探してみてください。そのほか細かいところも楽しめる絵本です。きっと子どもたちは、読むたびにいろんな発見をすると思います。

 

 どちらも楽しんでほしい。ぜひ、書店で手にとってみてください。

 

(M.H.)