翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

「子どもの本棚」に『チャンス』の書評が載りました。

 月刊書評誌「子どもの本棚」2月号に、『チャンス』(ユリ・シュルヴィッツ文・絵、拙訳、小学館)の書評が載りました。「生きのびるための力とは」というタイトルで書評を書いてくださったのは中村伸子さん。

「戦争を扱った本を子ども達に手渡す時に、大人の私たちは本当に手渡してよい本かどうか考えさせられることがある。本書は、戦争、ホロコースト、差別や迫害などが扱われているが、それだけでなく、家族の愛情、物語や芸術の持つ力なども描かれ、時々ユーモアさえ感じさせる文体になっている。重い内容の部分は、挿絵やコマ割りされた漫画のようなページになっているので、少し力を抜いて読み進めることができる。」(同誌18〜19ページ)と書いてくださっているのがうれしい。まさに、その通りで、作者のシュルヴィッツさんがふんだんな挿絵を描いた意図もそこにあると思います。中村さん、ありがとうございます。

 

 

 この本に描かれた第二次大戦下での6年におよぶ少年時代のシュルヴィッツさんの生活は、戦火こそ免れたものの、苦労の連続でした。その記憶を残そうと、こうして戦後70年経って、この本を書いたのでしょう。おりしも、太平洋戦争当時、そして原爆投下時の日本の様子を描いた『はだしのゲン』が、広島の教材から除かれようとしています。なにやってるんでしょう。逆でしょ。本来、全国の小中学校の教材に広げるべきものなのに。

 ロシアによるウクライナ侵攻が、来週で丸一年になります。どんなきっかけでもいいので、まずは停戦してほしい。一年たったから、とりあえず停戦する、でもいいじゃないですか。日本政府は、この侵攻をいいきっかけとばかりに、攻撃兵器を大量に購入する予算を組もうとしていることが信じられません。緊張を高めるだけでしょう。始まった戦争は、どんな兵器があっても簡単には終わらないし、その間、人がどんどん死んでいくことが、まさに目の前に示されているじゃありませんか。本来なら、仲介役を買ってでるような立ち位置を目指してほしいのですが、今の政権には期待できません。とても残念です。

 

(M.H.)