翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

戦争をする国にするな

 今日は真珠湾攻撃の日だ。

 総選挙前の心配が現実のものになってしまった。社会保障費をけずり、増税し、子育てにかかる費用を個人任せにし、教育を親の経済状態に左右されるままに放置している。出生率は下がり続け、経済は停滞し、社会も停滞している。自公政権は軍備を増強しようとしている。

 先日、朝日カルチャーセンターで、戦争と差別をあつかった自分の翻訳書を紹介してきた。その中で、戦争をあつかった6冊を、戦争の起きた順にならべてみる。

第一次世界大戦……
 『銃声のやんだ朝に』(ジェイムズ・リオーダン作、徳間書店)

スペイン内戦……
 『キャパとゲルダ ふたりの戦場カメラマン』(マーク・アロンソン、マリナ・ブドーズ作、あすなろ書房)

第二次世界大戦……
 『二つの旅の終わりに』(エイダン・チェンバーズ作、徳間書店)
 『ヒトラーと暮らした少年』(ジョン・ボイン作、あすなろ書房)
 『チャンス はてしない戦争をのがれて』(ユリ・シュルヴィッツ作、小学館)

湾岸戦争……
 『弟の戦争』(ロバート・ウェストール作、徳間書店)

 

 これらの作品は、戦争を始めた者たちの愚かさや、戦争に加担してしまった人たちの後悔、戦争の被害を受けた市民の苦しみを描き、若い読者たちに戦争の恐ろしさをさまざまな形で訴える作品だ。

 

 戦争抑止のための敵基地攻撃能力なんて、どう考えても言葉の矛盾だろう。「敵」の「基地」を「攻撃」したら、それは戦争を始めることにほかならない。真珠湾攻撃となにがちがうのか?

 ウクライナ戦争を見てもわかるように、戦争を始める口実なんて、為政者にとってはいくらでもある。そして、始まった戦争は必ず泥沼化し、市民の命が奪われるのだ。そうなってからでは遅い。

 

 今の日本は、子や孫たちの世代にすでに多くの負の遺産を残しつつある。少しでもそれを減らし、逆転させる努力をわれわれ年寄りはしなければならないと思う。

 

  なぜわれわれは死んだのか、と問う者がいたら、
  こう答えるがいい──われらが父祖の嘘のせいだと。

         ラドヤード・キプリング『想定問答』より

             (『銃声のやんだ朝に』p.170より)

 

(M.H.)