翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

オーストラリア学会シンポジウム

 昨日、6月17日(土)の午後、みなとみらいにある神奈川大学のキャンパスで開かれた、オーストラリア学会の第34回全国研究大会の第1日目、豪日交流基金助成シンポジウム「オーストラリア児童文学と日本」にお招きいただき、ガース・ニクス、モーリス・グライツマン、二人のオーストラリア人作家の拙訳作品について話してきました。

 学会関係者のみなさん、発表の機会をいただき、ありがとうございました。好きな作品を訳しているだけで、比較文学的な視点に乏しい自分にはとても貴重な時間で、刺激にもなりました。

 また、わたしにとってはとてもうれしい偶然がありました。

 

(神奈川大学の新しい校舎はとても近代的。)

 内容は、いずれ動画が公開されるそうですので、またご案内しますが、明星大学の加藤めぐみさんの概論のあと、翻訳家が4名、百々佑利子さん(パトリシア・ライトソンについて)、さくまゆみこさん(エミリー・ロッダ、ジャッキー・フレンチについて)、原田(ニクス、グライツマンについて)、三辺律子さん(オーストラリア児童文学と英米児童文学の比較)、研究者の鈴木宏枝さん(オーストラリア児童文学とアメリカ児童文学の比較)、ニコル・ムーアさん(入植者のファンタジーとオーストラリアの子ども劇場について)というメニューでした。

 質問の時間には、神奈川大学の杉田弘也先生から、ニクスの「王国の鍵」シリーズの第2巻のあれは……、というご指摘があり、驚きました。杉田先生、ほんとにニクス大好きなんですね。

 

 

 うれしい偶然というのは、自分の発表が終わった直後の10分間の休憩時間に、オーストラリア大使の奥様がいらっしゃって、この日の発表でわたしが訳書としてとりあげた、モーリス・グライツマンの "Once" 、 "Then" の編集担当をしていた、とおっしゃるではありませんか。結婚前にオーストラリアの出版社に勤めていて、この作品を編集した、というのです。

 短い時間でしたが、グライツマンの Once シリーズの特徴、つまり、短いセンテンスによる独特の文体や、児童書としては残虐な場面が出てくること(それについて、編集者としてできることは限られていたそうです)や、明るく楽しい幼年向きの作品と対照的であること、などなど、お話ができてとてもうれしかった。こういうこともあるんですね。

 

 というわけで、また動画が視聴できるようになりましたらご案内したいと思います。

 

 そして、子どもの本の翻訳に関わるみなさんとの同席は、いつもとてもリラックスできて、楽しいひとときであることも書き添えておきます。みなさん、ありがとうございました。

 

(M.H.)