翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

うれしい知らせ

 第20回JAT(日本翻訳者協会)新人翻訳者コンテストの日英部門で、友人のクリス・クレイゴさんが最優秀賞を受賞しました! おめでとうございます。

https://jat.org/ja/news/twentieth_annual_jat_contest_winners

 クリス・クレイゴさんとの関係は、彼が卒論で拙訳『エアボーン』の英日翻訳を分析してくれて、その関係でいくつか質問を受けたのが最初でした。その後、埼玉県の職員として来日し、今はまたアメリカにもどっています。もともと、日本文学の翻訳をめざしていたと思うので、今後の活躍に期待しています。

 

 これは8年前の写真なので、クリスくん、だいぶ若いです。

 

 最初にやりとりしたのは2016年、もう8年も前になるんですね。まだ大学生だったクリスくんですが、その当時からとてもすばらしい分析をしていて、訳した自分が気づいていないことがたくさんあって驚いたものです。

 以下に引用したのは、彼の卒論の冒頭部分の日本語訳(拙訳)。この卒論は文学的な言葉遊びを含む、とても刺激的なものでした。

 翻訳とは、一風変わった旅である。"translation" という言葉の語源そのものからは、「運び渡されたもの」というごく単純な意味合いが想起されるのだが、翻訳過程を経るうちに、テキストには、単なる交換にとどまらない、はるかに複雑なことが起きる。そして、そのテキストがようやくにして異国の岸に錨をおろす時、それは原文を映す鏡でもなければ原文の模写でもない。むしろ、原文と訳文のあいだの電気的交換、「電流」の往来の産物なのだ。翻訳は、テキストを別の言語で理解する機会を提供するにとどまらず、文学作品に対して、鋭い、時に衝撃的な再解釈の余地をもたらす。そして、その再解釈の対象は、作中に提示された人物や思想のみならず、テキストそのものとそれをとりまく諸事情にまで及び、ひいては原作に新しい生命が吹きこまれ、また、あらたな疑問が生まれるのである。

 

 きっともうすぐ、優秀な日本文学の紹介者になってくれると思います。

 おめでとうございました!

 

 以下は過去記事です。ご興味のある方はどうぞ。

haradamasaru.hatenablog.com

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(M.H.)