翻訳者の部屋から

児童書・YA翻訳者、原田勝のブログ

日本翻訳大賞

 日本翻訳大賞、という賞が設立され、現在、その第1回受賞作の選考が進んでいるのをご存知でしょうか?

「世界のなかでも豊かな翻訳文化をもつと言われている日本ですが、不思議なことに翻訳者を顕彰する賞はこれまでほとんどありませんでした。そこで「もっと翻訳者に光があたるように」と翻訳家の西崎憲が発起し、設立を決めたのが<日本翻訳大賞>です。」というのが、発起人の西崎さんの設立の趣旨です。

 選考委員は、わが師、金原瑞人先生をはじめ、岸本佐知子さん、柴田元幸さん、西崎憲さん、松永美穂さん、という錚々たるメンバー。そう、翻訳家が選ぶ翻訳大賞なんです。しかも、この賞のための資金集めをクラウドファンディングで行ったところ(わたしもちょっぴり出しました)、目標額の70万円をあっというまに達成し、なんと3百万円を超える金額が集まったのです。

 設立の趣旨や選考方法の詳細はこちら。

 


 推薦はだれでもできるのですが、すでに締め切られていて、今は第一次選考で17冊に絞られ、第二次選考中だそうです。

 推薦作品や二次選考対象作品の詳細はこちら。

        日本翻訳大賞公式HP

 

 わたしも推薦しましたよ。その作品は東江一紀さんの最後の翻訳作品、『ストーナー』です。第二次選考対象にも残っていて、第一回の受賞作の最有力候補だと、わたしは勝手に思っています。なんせ、わたしの読書量では、ほかの16作品は一つも読んでいないという体たらくなのですから、予想もへったくれもないのですが、公開されている推薦者のコメント数では、『ストーナー』推しが一番多いんじゃないでしょうか。

 この作品のことを語りだしたら、長くなるので、今日はやめておきますが、本当にすばらしい作品、すばらしい訳業です。翻訳の力で輝いている作品で、まさに翻訳大賞にふさわしい一冊なんです。

ストーナー

ストーナー

 

 この賞、選考対象は、「2014年1月1日から12月末までに刊行された新訳で、小説、詩、エッセイ、評論など、日本語に翻訳されたもの。※ 選考委員の訳書は除く。 」なので、ジャンルもなにもなく、比較検討は大変だと思います。

 たぶん、選ばれた作品に対しては、いろいろな意見が出ることでしょう。でも、そんなことはどうでもよくて、だれでも推薦できる候補作の中から、一流の翻訳者が選んで決める、っていう、その心意気がいいと思うんですね。

 このブログを読んでくださった方も、ぜひ、この賞のこれからに期待して、関心をもっていただけたらと思い、紹介させてもらいました。(M.H.)